研究課題/領域番号 |
19K05761
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研究機関 | 茨城大学 |
研究代表者 |
長南 茂 茨城大学, 農学部, 教授 (70312775)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | コエンザイムA / アセチル-CoA / マロニル-CoA / ポリヒドロキシ酪酸 / 脂肪酸 / パントテン酸キナーゼ / アセチル-CoAカルボキシラーゼ / 大腸菌 |
研究実績の概要 |
本申請研究は、様々な代謝経路でアシル基(炭素)の供給源として利用されるアセチル-CoAおよびマロニル-CoAを増産させ、有用物質生産におけるCoAコファクターエンジニアリングの有効性を示すことを目的とする。2019年度は①アセチル-CoA増産がポリヒドロキシ酪酸(PHB)生産に及ぼす影響、②マロニル-CoA増産が脂肪酸増産に及ばす影響について試験した。①では、Microcystis aeruginosa由来PHB合成酵素遺伝子を保持するプラスミドとアセチル-CoA増産用プラスミドを組み合わせて大腸菌に形質転換し、形質転換体のPHB生産量をガスクロマトグラフィーで解析した。最少培地を用いて30℃で48時間培養した結果、アセチル-CoA増産用プラスミドの有無でPHB生産量に違いが表れ、アセチル-CoA増産用プラスミドを保持する形質転換体でのPHB生産量は約2倍に増大した。また、培養48時間まで細胞内アセチル-CoAはより高いレベルで維持されていることが確認され、培養72時間でPHB生産量は16%(w/w)となった。②では、まずマロニル-CoA増産用プラスミドおよびオレイン酸を生合成できる脂肪酸増産用プラスミドの組み合わせで、脂肪酸生産量を比較検討した。IPTG非存在下では、30℃培養での脂肪酸生産量がもっとも高く、外来のアセチル-CoAカルボキシラーゼ(Acc)の発現が効果的であり、7.1倍多くの脂肪酸生産が観察された。加えて外来の脂肪酸合成酵素の発現では、オレイン酸の生産も観察され、総脂肪酸のおよそ17%を占めた。遺伝子破壊株による脂肪酸生産に関する実験では、脂肪酸合成抑制因子(FabR)の遺伝子破壊株で脂肪酸合成が促進され、オレイン酸生産も確認された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
PHB生産、脂肪酸生産と細胞内CoAプールの関係を解析した結果、アセチル-CoA、あるいはマロニル-CoAの細胞内レベルを上げることにより、これらを基質とするPHB、脂肪酸の生産量を増大させることが可能であることが明らかとなった。この点は、当初予定通りの成果が得られている。加えて、細胞内CoAプールサイズを大きくするのに必要なパントテン酸添加量も前記物質の生産性に大きく影響を与える結果も得られており、研究全体としてはおおむね順調に進行している。しかし、高度不飽和脂肪酸であるEPAおよびDHA生産用プラスミドの構築が遅れており、2020年度は、まず、これらプラスミドの作製に力を注ぎたい。
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今後の研究の推進方策 |
アセチル-CoAとPHB生産に関する研究では、当初の予定通りにアセチル-CoA分解酵素の遺伝子破壊株を宿主にしてPHB生産を検討する。加えて、パントテン酸供給がPHB生産に及ぼす影響についても併せて解析する。 マロニル-CoAと脂肪酸生産に関する研究では、脂肪酸合成系および分解系の遺伝子破壊株を宿主とした実験を継続して実施し、脂肪酸生産量の増大、および高度不飽和脂肪酸合成への新たなアプローチ法を探る予定である。高度不飽和脂肪酸合成の実験では、EPAおよびDHA生産用プラスミドの構築が必須なので、まず、これらプラスミドの作製から開始する。
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次年度使用額が生じた理由 |
(理由)2019年度は当初予定より試薬購入および機器修理による支出が多くなることが見込まれたため、10月に20万円の前倒し申請を行った。しかし、最終的には千円単位の端数が生じた。 (使用計画)2020年6月開催のアメリカ微生物学会(シカゴ)に研究成果の演題を申し込み、参加準備をしていたが、新型コロナウイルスのため開催中止が決定された。したがって、2020年度はこのキャンセルされた外国旅費を含めて、次年度使用額を必要となる消耗品費に充てて使用する。
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