研究課題
以前の研究において我々は細胞質,膜画分にβ1,6-グルカンを切断する強い活性を見出した.この本体を同定すべく,まず関係が予想される既知のグルカナーゼをコードする複数遺伝子の破壊株を作製して,活性を測定したところ,β1,6-グルカンに対する切断活性に影響が見られなかった.そこでその破壊株を大量培養し細胞破砕液から両活性の精製を試みた.しかし,最終的に活性の本体であると推測するに至ったバンドを質量分析で解析したところ,グルカナーゼ活性との関連が低いと考えられるタンパク質であった.精製はこの段階で一度諦めたが,その後の文献や過去の知見の再調査によりおそらく本体をコードする可能性の遺伝子を見出した.現在その解析を行なっている.Kre6はリン酸化を受けることがRIラベルされたATPを用いた実験により,以前に報告されていた.我々はそのリン酸化状態が,サンプルの調製法など実験法の工夫によりSDS-PAGEにおいて二段階のリン酸化状態として検出できることを見出した.そこでKre6 のリン酸化部位の同定と各部位の生理機能の解明を試みた.Uniprot 上の Kre6 の リン酸化部位に関する情報と出芽酵母の網羅的リン酸化断片に関する過去の知見から,19 個の Ser 残基と 1 個の Thr 残基,2 個の Tyr 残基を Kre6 のリン酸化部位の候補とした.そのうち,可能な限り広範囲にアミノ酸置換を導入してKre6の挙動をまずウエスタンブロッティングで調べた.多くには顕著な変化は見られなかったが,一部にはリン酸化を示す移動度の遅いバンドの減少,消失が見られた.ウエスタンの結果からリン酸化受ける可能性の高い部位のアラニン置換体の細胞内の局在を間接蛍光抗体法により調べたところ,一部の置換体において局在の変化が見られた.
2: おおむね順調に進展している
特にリン酸化の解析において,予想に沿った結果と,そこからさらに発展が期待される予想外の結果が見られたため.
Kre6の活性を見出すことは急務であり,見出したグルカナーゼ欠損株を活かしてその解析に臨みたい.またリン酸化に関してより高度な技術により,確かにリン酸化されていること証明し,その機能への意義を明らかにしていく.
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すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (7件) (うち国際学会 1件、 招待講演 1件) 備考 (1件)
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