研究実績の概要 |
前年度までに見出したβ1,6-グルカンを分解する酵素をGST融合蛋白質として大腸菌で発現,精製し,酵素活性のpH,温度依存性を解析,さらに酵素学的パラメーターの測定を行った.この酵素はミトコンドリアに存在する蛋白質であることが,網羅的な解析によりいくつかの論文に報告があり,またデータベースにも登録されている.ミトコンドリアに存在することの生理学的な意義が不明であったこともあり,この点に関しても再検討を行った.GFP融合蛋白質として発現した細胞で顕微鏡観察を行ったところ,細胞質の局在と思われる細胞全体に均一のシグナルが得られた.また細胞分画実験でも細胞質画分に多くの蛋白質が回収された.そのことからミトコンドリアに存在するとしてもその割合は低いであろうことが示唆された.またD75-4590の作用に関して解析を行なった.酵母の生育に適度に影響を与える薬剤の濃度を決定したのち,合成関連蛋白質の局在や存在量,蛋白質蛋白質相互作用に関する薬剤の効果を解析した.幾つかの再現性のある効果を見出した.検出された効果に関して,想定される原因を明らかにするための実験を行なっている.前年度までに見出した新たなβ1,6-グルカンを分解する活性をコードする遺伝子を含めた多重遺伝子欠損株のライセートは,β1,6-グルカンを分解する活性を示さない.すなわちバックグラウンドの活性が消失している.それを利用したインビトロの系を構築,多重遺伝子欠損株における合成関連蛋白質の高発現株のβ1,6-グルカンに対する種々の活性を調べたが,検出可能な基質の変化は現在までのところ見られていない.
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