研究課題/領域番号 |
19K05767
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研究機関 | 京都工芸繊維大学 |
研究代表者 |
麻生 祐司 京都工芸繊維大学, 繊維学系, 准教授 (70380590)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | バイオビニル / イタコン酸 / 発酵 / 創薬 |
研究実績の概要 |
ある種の微生物は末端ビニル基を有する化合物であるバイオビニルを生産する。これらは抗酸化性・抗菌性・抗炎症性・抗腫瘍性など多様な生理機能を併せ持つことから、バイオビニルを創薬シード化合物とすることで感染症予防・動脈硬化予防・抗ガン作用など種々の疾病予防機能を有する新たな医薬品開発が可能となる。そこで本研究では、疾病予防機能を有する新規創薬シード化合物として利用が期待されるバイオビニルの利用基盤を確立するためにバイオビニルの体系化を行った。 まず、申請者が開発したThiol-ene反応とHeck反応に基づくスクリーニング系を用いて、日本各地の土壌48種よりバイオビニル生産菌の候補240株を選択的に分離し生産物の構造解析をHPLC、NMR、MS分析により行った。その結果、生産されるバイオビニルの多くはイタコン酸(3.7%)と8-ヒドロキシヘキシルイタコン酸および9-ヒドロキシヘキシルイタコン酸生産菌(4.6%)であることがわかった。一方、それらとは異なる構造を持つと考えらえるバイオビニルを生産する微生物も複数分離した。よって、本スクリーニングを用いることで土壌からヒドロキシヘキシルイタコン酸生産菌をイタコン酸生産菌と同程度分離できることが示された。ヒドロキシヘキシルイタコン酸生産菌のうち代表株をS17-5株として26S rRNA遺伝子解析を行った。その結果、本株はAspergillus nigerと同定された。本成果は、申請者が開発したスクリーニング法を用いてイタコン酸以外のバイオビニルを生産する微生物を分離した初めての報告である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では、バイオビニルの体系化を行った後、発酵生産システムの構築と構造-機能相関の解析を行うことを目的としている。今年度は土壌よりバイオビニル生産菌を分離しバイオビニルの体系化を行った。その結果、土壌から8-ヒドロキシヘキシルイタコン酸および9-ヒドロキシヘキシルイタコン酸生産菌をイタコン酸生産菌と同程度分離できることが示された。その他のバイオビニル生産菌が比較的マイナーであり、これらを重点的に分離し生産するバイオビニルを構造解析することで体系化が深化できることが示されたことから、研究がおおむね順調に進展しているとした。
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今後の研究の推進方策 |
イタコン酸の発酵システムをベースに、バイオビニルのうちヒドロキシヘキシルイタコン酸の高生産発酵システムを構築する。発酵槽を用いて、培地、培養時間、温度、pH、DOなどを変化させ微生物工学的パラメータ(菌体収率、収率、最大比増殖速度など)を解析することでヒドロキシヘキシルイタコン酸の至適生産条件を検討する。また、長期間(~1ヵ月)の連続運転によるヒドロキシヘキシルイタコン酸の連続発酵生産も試みる。ヒドロキシヘキシルイタコン酸の生理活性を病原性微生物および動物細胞を用いたin vitro試験で評価する。また、ヒドロキシヘキシルイタコン酸の付加反応性を重合実験により評価する。すなわち、単独重合性(ホモポリマー合成)と各種コモノマーとの共重合性(ヘテロポリマー合成)を評価し、付加反応性と構造との関係を解析する。単独重合性評価では、ヒドロキシヘキシルイタコン酸に種々の比率でラジカル開始剤を添加し重合させる。共重合性評価では、反応系にコモノマーに加えて重合させる。重合により得られるポリマーの重合度、分子量、多分散指数をMALDI-TOF MS、NMR、GPCにて分析する。
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