研究課題/領域番号 |
19K05768
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
豊島 正和 大阪大学, 情報科学研究科, 特任助教(常勤) (90812230)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | ゲノムスケールモデル / シアノバクテリア / システム生物学 / 物質生産 / 光合成 |
研究実績の概要 |
光合成効率の高い微細藻類は、様々な有用物質生産における新たなプラットホームとして注目されている。微細藻類では様々な光環境に応じて光化学系IとIIの励起比が変わり、光合成によるATPとNADPHの合成比が変化するが、細胞内の様々な代謝や生理現象によりATPやNADPHを消費し、ATP/NADPH比(レドックスバランス)を精密に保っている。このように光化学系の励起比によってATP・NADPH合成比が最適な状態とATP・NADPH過剰になり物質生産に有利な状態が生じる。本研究では、代謝シミュレーションにより様々な光環境下におけるATP・NADPH合成比と代謝を予測し、最適なレドックスバランスとのギャップを利用した微細藻類での有用物質生産系構築を目的とする。そのために、ラン藻Synechocystis sp. PCC 6803において様々な光環境下での細胞内の代謝を予測できるモデルを構築し、そのモデ ルを用いて様々な波長の光照射下のATP・NADPH合成比を予測する。そして、シミュレーションにより予測されたATPやNADPHが過剰な光条件下での有用物質生産を行う。 本年度は申請者が構築した光合成反応を精緻化したSynechocystis sp. PCC 6803のゲノムスケール代謝モデルを用いたシミュレーションから様々な波長の光照射下での光と細胞のフラックス状態の関係を明らかにした。また、生理学的解析からそのシミュレーション予測の精度の高さを確認した。さらに、目的とする物質生産へ向けて標的となる物質の探索を開始した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究においては、光化学系の明反応と細胞の中枢代謝を見渡せるモデルを用いて様々な波長の光環境におけるATP・NADPHの生産バランスを利用した有用物質生産システムの構築を目指している。本年度はSynechocystis sp. PCC 6803のゲノムスケール代謝モデルを用いたシミュレーションにより様々な波長の光照射下のSynechocystis sp. PCC 6803のATP・NADPHの生産状態を明らかにした。また、その予測の正確性を遺伝子破壊株などを用いた生理学的解析により示した。これらの状況により順調に研究は進展していると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
今後は最適な光波長と生産物質の組み合わせを選択し、Synechocystis sp. PCC 6803の野生株や遺伝子組換え株を用いて実際に目的物質が効率的に生産されるかを検証する。さらに物質生産効率を向上させるために培養法なども検討する。
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