光合成効率の高い微細藻類は、様々な有用物質生産における新たなプラットホームとして注目されている。微細藻類では様々な光環境に応じて光化学系IとIIの励起比が変わり、光合成によるATPとNADPHの合成比が変化するが、細胞内の様々な代謝や生理現象によりATPやNADPHを消費し、ATP/NADPH比(レドックスバランス)を精密に保っている。このように光化学系の励起比によってATP・NADPH合成比が最適な状態とATP・NADPH過剰になり物質生産に有利な状態が生じる。本研究では、代謝シミュレーションにより様々な光環境下におけるATP・NADPH合成比と代謝を予測し、最適なレドックスバランスとのギャップを利用した微細藻類での有用物質生産系構築を目的とする。そのために、ラン藻Synechocystis sp. PCC 6803におい様々な光環境下での細胞内の代謝を予測できるモデルを構築し、その モデルを用いて様々な波長の光照射下のATP・NADPH合成比を予測する。そして、シミュレーションにより予測されたATPやNADPHが過剰な光条件下での有用物質生産を行う。 本年度は申請者が構築した光合成反応を精緻化したSynechocystis sp. PCC 6803のゲノムスケール代謝モデルを用いた様々な波長の光照射下での光と細胞のフラックス状態のシミュレーションから有用物質生産の標的として選択した有機酸であるリンゴ酸、フマル酸、コハク酸、クエン酸の生産性向上のために、リンゴ酸酵素を欠損させたSynechocystis sp. PCC 6803株を用いて、6種類の波長の光照射下で培養を行い、標的有機酸の定量を行った。
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