沖縄微生物ライブラリーに保存されている3-45菌株(Streptomyces erythrochromogenes)や4-27菌株(Streptomyces levis)は貧栄養条件により、細胞内にイネいもち病菌の付着器の異常な拡大の誘導及び付着器のメラニン化を抑制する物質を生産し、イネ植物体上でもイネいもち病菌の発病を抑制する。同様にイネいもち病菌の付着器の異常な拡大の誘導及び付着器のメラニン化を抑制する物質の生産は、1-86、2-78、2-85、3-38、20-72及び20-86菌株でも確認され、いずれもStreptomyces属であった。 1-86菌株について詳しく調査した結果、1-86菌株は富栄養条件で細胞内にイネいもち病菌の付着器の異常な拡大の誘導及び付着器のメラニン化を抑制する物質を生産した。これらの研究により、Streptomyces属の様々な種が貧栄養、富栄養条件下で、細胞内にイネいもち病菌の付着器を異常拡大させ、メラニン化を抑制する物質を蓄積することが明らかになった。また、それらの物質はいずれも酢酸エチルに不溶な水溶性物質であり、熱や酸に安定な分子量5万~10万の物質であることが明らかになった。さらに他の植物病原菌においても発芽官の先端の膨潤、植物体上での発病を抑制する効果が確認され、いずれの植物病原菌のおいても、分生子の膨潤やメラニン化の抑制への関与は確認されなかった。イネいもち病菌を用いた遺伝子発現解析では、イネいもち病菌の付着器のメラニン化に関与する遺伝子の発現は抑制されていた。これらの結果は、本物質が、発芽後の侵入に関わる遺伝子に作用する可能性を示した。 本研究により、沖縄微生物ライブラリーに保存されているStreptomycesが細胞内に蓄積する物質がイネいもち病や他の植物病原菌の防除剤の開発に利用できる可能性を示した。
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