研究課題/領域番号 |
19K05773
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研究機関 | 鹿児島大学 |
研究代表者 |
二神 泰基 鹿児島大学, 農水産獣医学域農学系, 准教授 (60512027)
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研究分担者 |
玉置 尚徳 鹿児島大学, 農水産獣医学域農学系, 教授 (20212045)
後藤 正利 佐賀大学, 農学部, 教授 (90274521)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 白麹菌 / 固体培養 / α-アミラーゼ / クエン酸 / ヒストン脱アセチル化酵素 / サーチュイン / 推定メチルトランスフェラーゼ / クエン酸輸送体 |
研究実績の概要 |
本課題は、伝統的な麹造りの温度管理でデンプン分解酵素やクエン酸の生産をバランスよく制御することができる機構を解明することを目的としている。 本年度は、まず、白麹菌(Aspergillus luchuensis mut. kawachii)による物質生産にヒストン脱アセチル化酵素であるサーチュインが関わっているのかどうかについて解析した。白麹菌において5つのサーチュイン遺伝子(sirA、sirB、sirC、sirD、およびsirE)の破壊株を構築し、米麹を製造した。その結果、sirD破壊株はコントロール株と比較して、麹あたりのクエン酸生産量とα-アミラーゼ活性が低下した。また、sirD破壊株は分生子形成能が低下し、細胞壁合成阻害剤であるカルコフルオロホワイトとコンゴーレッドに対する感受性が上昇した。以上の結果より、白麹菌においてSirDがクエン酸生産、α-アミラーゼ生産、分生子形成、細胞壁合成・維持などにおいて重要な役割をもつことが示唆された。 次に、白麹菌のクエン酸高生産機構における推定メチルトランスフェラーゼLaeAの役割について検討した。LaeAは糸状菌において形態分化や二次代謝の制御因子として知られている。白麹菌において、laeAを破壊した結果、クエン酸生産能が低下した。そこで、laeA破壊株における遺伝子発現変動についてCAGE(cap-analysis gene expression)解析した結果、推定細胞質膜局在クエン酸輸送体遺伝子cexAの発現が顕著に低下していることが明らかになった。またcexAの強制発現は、laeA破壊株のクエン酸生産能を回復させた。さらにメチル化ヒストン抗体を用いたChIP-qPCRにより、LaeAはcexAプロモーター領域のユークロマチン/ヘテロクロマチン比を制御することにより、クエン酸生産を制御することが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本年度はサーチュインSirDならびに推定メチルトランスフェラーゼLaeAに関する研究成果がまとまり、それぞれ論文発表することもできた。また、クエン酸輸送体をコードするcexA遺伝子の発現がエピジェネティックに制御されているという今後の研究方針を決める上で重要なことを明らかにできた。よって、当初の計画以上に進展しているとした。
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今後の研究の推進方策 |
麹の製造工程における白麹菌の遺伝子発現変動を解析した結果、転写因子をコードするnosAとrosAがクエン酸生産に関与する可能性を見出している。来年度は、nosAならびにrosAの遺伝子破壊株の表現型、NosAとRosAの局在、相互作用等の解析をとおして、これらの転写因子とクエン酸生産の関連性を明らかにする。また、転写因子NosAとRosAがどのような遺伝子の発現を制御するのかをトランスクリプトーム解析により明らかにする。 また並行して、本年度に解析したサーチュインSirD、推定メチルトランスフェラーゼLaeA、来年度に解析する転写因子NosAとRosAが、麹造りでの白麹菌の遺伝子発現にどの程度関与しているのかを各遺伝子破壊株の比較トランスクリプトーム解析で評価する。 さらに並行して、クエン酸輸送体をコードするcexA遺伝子の発現を直接制御する転写因子の探索を行う。
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