研究課題
本課題は、白麹の製造において温度を下げるという仕舞仕事によりデンプン分解酵素とクエン酸の生産をバランスよく制御できる機構の解明を目的として実施した。初年度に、白麹菌のヒストン脱アセチル化酵素(サーチュイン)を解析し、sirD破壊株の麹において酸度とα-アミラーゼ活性の低下することを明らかにした。また、CAGE解析の結果、sirDの破壊により白麹菌のゲノムにコードされる11488遺伝子のうち、1314遺伝子が発現上昇し、1590遺伝子が発現低下したことが示唆された。サーチュイン活性はNAD+を要求する。そこで本年度は、製麹過程におけるNAD+とNADHの量を測定し、麹が完成する出麹においてNAD+が減少することが分かった。よって、製麹過程でサーチュイン活性は低下すると考えられた。次に、サーチュインSirDが製麹時の遺伝子発現の変化にどの程度関与するのかをトランスクリプトームを比較することで評価した。先行研究のDNAマイクロアレイ解析により、仕舞仕事で566遺伝子が発現上昇し、548遺伝子が発現減少することが示唆された。上述したCAGE解析のデータと比較した結果、仕舞仕事により発現が上昇する566遺伝子のうちsirD破壊により発現上昇する遺伝子は168含まれていた。また、仕舞仕事により発現が減少する548遺伝子のうちsirD遺伝子の破壊により発現が減少する遺伝子が214含まれていた。このことから、仕舞仕事による遺伝子発現変化の約35%にSirD活性の低下が関与する可能性が示唆された。本課題では、サーチュインの他に遺伝子発現の制御に関わる推定メチルトランスフェラーゼLaeA、MAPキナーゼ、転写因子等について解析を行った。今後、各制御因子の関連性の解明に向けた研究を展開する。
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https://ace1.agri.kagoshima-u.ac.jp/shochu/brewing/research.html