研究課題/領域番号 |
19K05775
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研究機関 | 富山県立大学 |
研究代表者 |
松井 大亮 富山県立大学, 工学部, 助教 (40748513)
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研究分担者 |
平田 佳之 大阪薬科大学, 薬学部, 助教 (00745854)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | アミノ酸酸化酵素 / ケト酸 / ペプチド合成 |
研究実績の概要 |
1.①大腸菌異種発現系の各種アミノ酸酸化酵素・脱水素酵素を調製し、酸化酵素活性を確認した。②2,3位にアミノ基などを有する非天然アミノ酸から酵素により酸化したケト酸を作成し、縮合剤を用いることなく、同一系内にて連続したペプチド合成へと導く。上記酵素を用いて、非天然アミノ酸である2, 3-diamino propanoic acid誘導体を基質とし酵素反応を調べた結果、豚腎臓由来D-アミノ酸酸化酵素(pkDAO)だけが酸化反応を触媒することを明らかにした。③pkDAOよりも広い基質特異性を示す酵素を取得するために、2,3-diamino propanoic acid誘導体を唯一の窒素源とした培地で酵素スクリーニングを行った結果、pkDAOよりも広い基質特異性を示す酵素活性を有する微生物の単離に成功した。 2.①上記1-②の様に同一系内での連続したペプチド合成を目的に、基質として必要な2,3-diamino-propanoic acid誘導体の効率的合成に着手した。基質の一つである2,3-diamino-3-phenylpropanoic acidを4段階の合成反応にて、ラセミ体混合物としてグラムスケールで合成に成功した。②Bode反応に必要なN-hydroxylamine誘導体の合成を行った。③phenylpyruvic acidにN-benzylhydroxylamineの反応条件を検討し、Bode反応を円滑に進める合成条件並びに精製条件を明らかにした。 3.pkDAO粗酵素液を用いて、D-phenylalanineからケト酸を酵素反応により行った結果、カタラーゼの添加により副反応なく、ケト酸を得ることが出来た。得られたケト酸を用いて、同一系内にてN-benzylhydroxylamineによるBode反応を行い、目的であるペプチド生成物を確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
1.様々なアミノ酸を基質としてケト酸を合成することが出来る酸化酵素(pkDAO)の選抜に既に成功している。また、2, 3-diamino propanoic acid誘導体を用いたスクリーニングで、pkDAOよりも広い基質特異性を示す酵素の取得も出来ている。これらの酵素を用いれば、様々なアミノ酸からケト酸を合成することが可能である。 2.モデルとする反応(2, 3-diamino-3-phenylpropanoic acidとN-benzylhydroxylamineからペプチド結合を合成する反応)の基質である2, 3-diamino propanoic acid誘導体の大量合成が出来ている。また、Bode反応に必要な合成条件を確立し、同一系内にて連続したペプチド反応を行うことが可能としている。 3.アミノ酸酸化酵素だけでケト酸を生成した場合、同時に生成される過酸化水素が生成物の脱炭酸反応を行う。その副反応を除くためにカタラーゼを添加することで、90%以上の収率でケト酸を得られることを明らかにした。得られたケト酸とN-benzylhydroxylamineとの合成に成功しており、今後その反応条件と精製方法の検討、その他の基質に拡張させる。 以上のことから、1年目にしてモデルとする反応の構築が出来ており、次年度からは様々な酵素の探索を行うとともに、様々な反応に発展させたい。
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今後の研究の推進方策 |
1.①スクリーニングで取得した広い基質特異性を示す酵素活性を有する微生物から酸化酵素を精製し、酵素科学的特性解明を行う。N末端配列を明らかにし、遺伝子クローニングを行い、得られた酵素の大腸菌を用いた発現系の構築に取り組む。②高い活性や溶媒耐性などを視野に入れ、継続して酸化酵素のスクリーニングを実施し、良い特性を示す酵素であれば、上記①の様に遺伝子クローニング、異種発現系の構築を行う。③N-hydroxyphenyl amino acidを合成することが難しいことから、水酸化酵素の探索にも挑戦する。植物や微生物から見出されているアミノ基の水酸化酵素の異種発現系の構築や、実際に自然界からの水酸化酵素活性を示す微生物の探索を行う。 2.①N-hydroxyphenylalanineの合成条件を確立する。②上記1③のスクリーニングに使用するアルドキシムなどの基質を合成する。③立体選択的にペプチド合成ができるよう、基質の絶対構造を決める。 3.①D-phenylalanine酸化酵素を用いて生成したphenylpyruvic acidとN-benzylhydroxylamineとの合成に最適な条件を調べる。さらに分液操作などで精製し、生成物のNMRなどによる同定を行う。②D-phenylalanine以外のアミノ酸から酸化酵素を用いてケト酸を合成し、生成物を同定するとともに、N-hydroxylamineとの反応を検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究活動に必要な旅費を使用しなかった点、並びに予定していた設備費用や消耗品費を節約できたことから次年度に資金を繰り越すことができた。96穴プレートを用いたスクリーニング系の構築に利用する。
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