研究課題/領域番号 |
19K05780
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研究機関 | 東京農業大学 |
研究代表者 |
新村 洋一 東京農業大学, 生命科学部, 教授 (00180563)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 過酸化脂肪酸還元乳酸菌 / 乳酸菌 / 過酸化脂肪酸 / 過酸化脂肪酸還元酵素 / 酸化ストレス防御機能 / 酸化ストレス / プロバイオティクス |
研究実績の概要 |
私達は過酸化脂肪酸を積極的に還元するLactobacillus plantarum P1-2株を分離し、酸素感受性短寿命変異体の線虫に本菌を投与したところ、平均寿命の延長と老人性しみ(リボフスチン)の生成を抑制した。続いて鉄剤で消化管の脂質過酸化を誘導したラットに本菌を投与したところ、大腸粘膜中の脂質過酸化指標の低値を示す結果を得た。ラットにおける生理活性は死菌体で消失することから、酵素に起因と推定された。そこで、I. 過酸化物分解機構解析、II.分離株の応用による酸化ストレス防御系開発、を行った。 I.過酸化物分解機構解析:一昨年度に本分離株の過酸化脂肪酸還元酵素を精製した結果、新規の可能性が示唆された。昨年度は、X線結晶解析を試み、活性に関与するアミノ酸3残基を推定した。各々の変位酵素を作成して、過酸化脂肪酸還元活性を測定した結果、活性の消失を観察し、3残基の反応への寄与が示唆された。反応機構の提唱を試みている。 II.分離株の応用による酸化ストレス防御系開発:ブタはヒトに近い大腸構造を持つため、ヒト用プロバイオティクス資材開発に最適な生物である。一昨年度に本分離株大量培養系を確立した。幼児期のブタは、環境ストレスに弱いため、抗菌剤の投与が行われており、酸化ストレス防御系も弱いが、貧血防止のための鉄剤投与も試みられている。抗菌剤投与は抗生物質耐性菌防止から縮小が望ましい。昨年度からブタへの投与試験では、抗菌剤非添加、鉄剤投与で分離乳酸菌投与実験を開始している。その結果、幼児期のブタの体重増加促進、血中の炎症性マーカの低下、糞便中の乳酸菌、ビフィズス菌の増加、過酸化脂質マーカーの減少、著しい肉質向上が観察された。現在この結果の解析を試みている。ブタの実用生産面では、投与実験に使用した菌体が、ジャーファメンター培養処理による凍結菌体であり、価格の低価格化が必要となる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
昨年度の2目標として、I. 過酸化物分解機構解析:II.分離株の応用による酸化ストレス防御系開発、を試みた。その結果、 I. 過酸化物分解機構解析:X線結晶解析から、活性に関与するアミノ酸3残基を推定し、各々の変位酵素の作成と過酸化脂肪酸還元活性測定に成功した。活性への関与が示唆されたため、反応機構の提唱が可能になった。新規酵素の可能性が示唆されている。 II.分離株の応用による酸化ストレス防御系開発:ブタへの投与試験で、幼児期のブタの体重増加促進、血中の炎症性マーカの低下、糞便中の乳酸菌、ビフィズス菌の増加、過酸化脂質マーカーの減少、著しい肉質向上を観察した。この実験は、抗菌剤非添加、鉄剤投与で行ったため、予想以上の投与効果が観察された。 以上、計画以上の進展であったが、実用には培養菌体の製造経費の削減が必要となる。 そこで、乾燥オカラでの培養系確立を試みている。
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今後の研究の推進方策 |
継続中目標: I. 過酸化物分解機構解析、II.酸化ストレス防御系開発、について。 I. 過酸化物分解機構解析:昨年度の結果に基づき、Lactobacillus plantarum P1-2株の過酸化物分解機構を提唱する予定である。 II.分離株の応用による酸化ストレス防御系開発:ブタへの投与試験では、抗菌剤非添加、鉄剤投与で行ったため、予想以上の投与効果が観察された。なぜ著しい効果が観察されたかを解析する予定である。 新たな目標:ヒト用プロバイオティクス資材開発、ブタはヒトに近い大腸構造を持つため、ヒト用プロバイオティクス資材開発に最適な生物であり、昨年度末の結果から、反応機構が明確化された、ヒト用酸化ストレス防御プロバイオティクス資材開発を試みたい。 ヒト用資材開発には、酵母が必要であり、分離乳酸菌株と共培養可能な酵母の分離に成功している。この株の属種の確定と併行して、昨年度から継続中の乾燥オカラでの分離乳酸菌株との共培養を試みたい。既に実用化されている麹菌との共培養系も併行して行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
本申請最終目標:ヒト用資材開発遂行には、食品使用可の酵母が必要である。 申請者は酵母株の分離に成功したが、食品使用には責任のある属種の確定が必須であり、3ヶ月間かかる。この期間は、昨年度申請の途中になるため、酵母同定依頼を次年度に延期した。
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