研究課題/領域番号 |
19K05783
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研究機関 | 国立研究開発法人海洋研究開発機構 |
研究代表者 |
宮崎 淳一 国立研究開発法人海洋研究開発機構, 超先鋭研究開発部門(超先鋭研究プログラム), 副主任研究員 (50435848)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 細胞間共生 / 親海熱水活動域 / 水素酸化硫酸還元菌 / 嫌気的メタン酸化 |
研究実績の概要 |
本研究は「研究代表者によって深海熱水活動域から分離培養した2種の水素酸化硫酸還元菌(SRB)の電子伝達の多様性と誘導する仕組みを明らかにし、培養可能なメタン生成アーキアと新規共生系を創出することで、嫌気的メタン酸化と異種細胞間電子伝達のシステムを解明すること」を最終目標として3年間実施し、生物機能を飛躍的に獲得し、地球上の生命の進化を考える上で極めて重要な生命現象である異種生物間の共生というスタイルへの理解を深めることとしている。 初年度の2019年度は「見つけること」を目的として、分離培養できた2種のSRBは数個から1000以上の細胞が凝集するaggregate状態を形成する培養条件を探索し、その結果、本菌の最適培養条件と、集合体をつくる条件に関してはおおよそ見いだすことができた。 2年目となった2020年度は、2019年度に引き続き分離培養できた2種のSRBの共生成立のためのサイン行動としての集合体形成の再現性確認を行い、条件を確定させた。さらに2020年度は「共生を成立させること目的としてSRBと様々な培養可能なMethanogenの共培養を行う」ことを目的として、まず共生ターゲットとなるメタン生成アーキアの選定を行った。共生実験をスムーズに行うためには分離培養できた硫酸還元菌と比較的生育条件が近いメタン生成アーキアが良いと考え、6種類のメタン生成アーキア選定し、分離した硫酸還元菌の培地で生育するか、必要な添加物、メタン添加等の様々な条件でその生育を確認を行った。その後、確実に条件を把握できた1種のメタン生成アーキアに対してSRBとの共生実験を行ってみたが、現在のところまだ共生は見られていない。今後も他の5種も加えて引き続き共生実験を試みていく予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2年目となった2020年度は、COVID-19の感染拡大防止のための緊急事態宣言発令にともない、本研究の進行にやや遅れが生じた。そのため、当初行う予定であった電気培養とトランスクリプトームに関しては2021年度以降にし、共生実験を前倒して行う事とした。分離培養した水素酸化硫酸還元菌(SRB)の共生相手候補となるメタン生成アーキアの選定を行うこととし、メタン生成アーキアの培養条件および共生実験の培養条件の検討を行っている。現在のところ選定した6種のうち、まだ1種に関してのみ共生実験まで進めることができているものの、他のメタン生成アーキアに関しては未だ共生実験まで進めることができていない。しかしながら、SRBに関しては、本年度の研究から特性が明らかとなり、新規性がより確かになったので、その点では進めることができていると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度となる2021年度は「SRBと様々な培養可能なメタン生成アーキアの共培養を行い、その共生メカニズムを明らかにする」ことを目的としている。これを達成するためにSRBおよび培養可能なMethanogenが共生し、嫌気的メタン酸化が起こる培養条件の引き続き検討を行っていく。2020年度の進捗が当初の予定よりも進んでいないことから、SRBとメタン生成アーキアの共培養できる条件を多く試行する。また、SRBの正常およびアグリゲート状態のトランスクリプトームを含む発現解析を進めることで、未培養で未だ解決されていないの実現場の「嫌気的メタン酸化のメカニズム」に関するヒントを少なくとも得たいと考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度はCOVID-19の感染拡大防止のための緊急事態宣言発令による研究の遅延、そして世界レベルでのパンデミックの影響により当初参加を予定していた国際学会が2022年度に延期となった。その影響で研究が当初の予定よりも進まず、使用計画を多少変える必要性が生じている。現在はSRBの2状態(通常、アグリゲート)におけるトランスクリプトーム解析の費用として使用する予定である。また、分離したSRBの特性をまとめて論文にまとめることとしたので、その投稿準備費用(英文校閲、投稿料)に充てる予定にしている。
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