研究課題/領域番号 |
19K05786
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研究機関 | 東京海洋大学 |
研究代表者 |
今田 千秋 東京海洋大学, 学術研究院, 教授 (90183011)
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研究分担者 |
五十嵐 康弘 富山県立大学, 工学部, 教授 (20285159)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 海洋植物由来乳酸菌 / αアミラーゼ阻害活性 / αグルコシダーゼ阻害活性 / キサンチンオキシダーゼ阻害 / 無調整豆乳 / 乳酸発酵 / 薬草 / 海藻 |
研究実績の概要 |
3年間の研究期間において海洋植物由来乳酸菌培養物について、生活習慣病に効果のあることが知られているαアミラーゼ阻害(AI)やαグルコシダーゼ阻害(GI)、またキサンチンオキシダーゼ阻害(XI)活性を有する物質を培養上清から単離・精製し、その化学構造を解明するのが目的である。初年度は海洋植物由来乳酸菌2株について、申請書に記載の各種薬草粉末や海藻粉末を添加した無調整豆乳培地で培養し、培養物についてAIおよびGI活性を測定した。 各種薬草及び海藻粉末などの入手:乳酸菌の発酵に用いる薬草は、アガリクス、長命草等の粉末を購入した。また、アカモク等の海藻粉末を入手した。 培養:これらの薬草粉末や海藻粉末などを添加した市販の無調整豆乳中で、沖縄県久米島町の海岸で採集したアマモから分離した海洋植物由来乳酸菌Lactobacillus delbrueckii KM-2株及び岩手県大槌町の海藻マツノリ表面から分離した海洋植物由来乳酸菌L.platarum H-6株をそれぞれ37℃で3日間静置培養した。 AI活性およびGI活性:これらの2株を培養後、遠心分離して沈殿物を除去した上清について、比色法によりAIおよびGI活性をそれぞれ測定した。その結果、KM-2株はアガリクス添加培養で最も強いAI活性が見られた(63%阻害)。しかし、前回最も活性が高かったギムネマシルベスタ添加では18%阻害であり、前回の82%阻害を大きく下回った。一方、H-6株はアガリクス添加では31%阻害であった。両株ともその他の薬草粉末および海藻粉末などには阻害活性は確認されなかった。GI活性を測定した結果、KM-2株はアガリクス添加では63%阻害、また長命草では37%阻害が見られた。一方、H-6株はアガリクス添加では31%阻害であった。しかし、両株ともその他の薬草粉末および海藻粉末などにはGI活性は確認されなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度はまず当研究室において超低温(-80℃)で保存している海洋植物由来乳酸菌について、生存確認を行うとともに交付申請書に記載の方法で各種薬草や海藻粉末を添加した無調整豆乳で培養し、培養上清についてAI活性および新規にGI活性を測定した。その結果、若干交付申請書とは異なる結果が得られた。すなわち、KM-2株はギムネマシルベスタを添加すると最も高いAI活性が見られたが、今回はそれほど高い活性は得られず、アガリクス添加が最大であった。このような培養物の活性の変動については現在究明中であるが、別の海洋由来乳酸菌(L.platarum H-6株)についても同様に活性の変動が生じるかを調べたところ、KM-2株ほどではないが、ある程度の活性の変動が見られた。そこで、2年度は活性の再現性のある培養方法(乳酸菌株の保存と乳酸菌の接種量、培養に用いる容器とその容量など)を検討する必要があると思われた。
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今後の研究の推進方策 |
今年度は2年目であり、各種薬草粉末や海藻粉末などを添加した豆乳中で乳酸菌の培養を行い、AI、GI、およびXI活性の再現性を調べるとともに培養条件を色々検討する予定である。得られた最適条件(添加する薬草の種類とその濃度、海水濃度、金属イオン濃度、培養時間、培養温度など)で中規模培養を行い、培養物から有効物質を単離・精製する予定である。また、豆乳中には糖鎖が付いたグリコシド型のイソフラボンが存在することが知られているが、糖鎖がはずれたグリコシド型と比較すると体内での吸収性は低い。ある種の乳酸菌はグリコシド型イソフラボンをアグリコン型に変換する酵素(βグリコシダーゼ)を有することが報告されている。従って、当該菌株についても同酵素を保有しているかどうかを調べたいと考えている。また、各種培養物について、アグリコン型イソフラボンのダイゼインに構造が類似した女性ホルモン様活性を有するエクオールの生産性も調べる予定である。現在のところ、エクオールを生産する乳酸菌はほとんど報告されていない。さらに、当研究室で保存している海洋深層水や表面海水から分離した乳酸菌やキムチやぬか漬けなどからの分離株についても同様に培養を行い、AI、GI、およびXI活性の測定を行うことも計画中である。
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次年度使用額が生じた理由 |
共同研究者である、富山県立大学の五十嵐教授との打ち合わせで、日帰りで富山県に赴く予定が、新型コロナウイルスの感染拡大により、キャンセルになり、費用が次年度使用額となった。
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