研究課題/領域番号 |
19K05792
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
神崎 浩 岡山大学, 環境生命科学研究科, 教授 (60183787)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | β-N-アセチルグルコサミニダーゼ / β-GlcNAcase / TMG-chitotriomycin / PNP-TMG |
研究実績の概要 |
我々が微生物代謝産物として見出した、TMG -chitotriomycin (TMG-: Trimethylglucosaminium-) は ある特定の生物由来の β-N-Acetylglucosaminidase (β-GlcNAcase)を阻害する。さらにTMG -chitotriomycin感受性β-GlcNAcaseは、我々が合成で調製した別のTMG化合物、PNP-TMG(PNP-:p-nitrophenyl-) によっても阻害される。これらTMG残基を有する化合物(TMG阻害剤)に対して全く阻害されない β-GlcNAcaseも存在する。これら異なる阻害特性を示す2種類の β-GlcNAcase は基質特異性が異なり、天然における役割が異なることを示唆してきた、今回、自然界から単離したPNP-GlcNAc資化性菌MK-26株をブイヨン培地およびpNP-GlcNAc培地で培養すると、その休止菌体はともにPNP-GlcNAc分解活性を示し、そのうちのブイヨン培地培養菌体が生産するβ-GlcNAcase(β-GlcNAcase-MK26-Bouillon)について無細胞抽出液レベルで、TMG-chitotriomycin と PNP-TMGに対する阻害感受性を検討したところ既存の感受性酵素と異なる阻害剤感受性を示すことが明らかとなった。この酵素をイオン交換、ゲル濾過クロマトグラフィーで部分精製し、その部分精製酵素についてTMG-chitotriomycin、PNP-TMGに 対する阻害特異性を検討したところ、既存酵素と異なっていることが判明した。これらの事実から、TMG-化合物に対する阻害感受性で、β-GlcNAcaseが3種のタイプに分類可能であることが推察された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
β-GlcNAcase-MK26-Bouillonと名付けた酵素については、無細胞抽出液レベルで、TMG-chitotriomycinとPNP-TMGと言う2種のTMG化合物に対する阻害特性が、既存のこれら阻害剤感受性酵素と異なっていることがわかっていたが、部分精製酵素での感受性確認で、明確に既存の酵素と異なることが判明した。さらに、この酵素の精製条件をほぼ確立できたため、今後精製酵素を得て、阻害特性のユニークさの確定が容易にできると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
β-GlcNAcase-MK26-Bouillon酵素について、MK26株の大量培養、無細胞抽出液の調製、イオン交換、疎水性、ゲル濾過などのクロマトグラフィーを組み合わせて、電気泳動的に単一の酵素を取得し、その酵素の特性として、TMG-chitotriomycinとPNP-TMGに対する阻害感受性を測定して、既存酵素との相違を確定する。さらに、この酵素の基質特異性を精査して、既存のTMG-化合物感受性β-GlcNAcase、TMG-化合物非感受性β-GlcNAcase との違いを明確にし、その違いから、β-GlcNAcaseのSubsite構造の多様性に関する知見を得る。
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次年度使用額が生じた理由 |
COVID19のため、大学研究室での研究ができない時期があり、さらに、情報収取のための出張旅費の支出ができなかったことから、予定の金額が支出できなかった。次年度は、資材購入を行って、集中して酵素精製を行い、予定の実験計画をこなす。
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