糖質加水分解酵素(GH)には同じファミリーに属しながら,Subsiteによる基質認識機構の異なる酵素が知られており、GHの基質認識機構の多様性の解明には,新奇な基質認識機構を有するGHを見出すことが重要である。 我々は,ハスモンヨトウ蛹β-N-Acetylglucosaminidase (GlcNAcase) の阻害剤としてTMG-chitotriomycinを発見し、TMG (Trimethylglucosaminium) 残基が阻害活性に重要で、PNP(p-Nitrophenyl)-TMGも阻害を示すことを明らかにしてきた。 本研究では、これらTMG阻害剤に対して既存酵素と異なる阻害特異性を示す酵素を生産する微生物の獲得を目指した。 これまでに、天然から新たにPNP-GlcNAc資化性菌27株を単離し、最もGlcNAcase活性の高かったMK26株をフイヨン培地で72時間培養した菌体から精製したGlcNAcaseはハスモンヨトウ蛹由来GlcNAcaseと同様にTMG-chitotriomycin、PNP-TMGに より阻害されるが、それらに対する阻害特異性が異なっていることを明らかにした。さらに2021 年度に24時間培養によって得られる菌体のGlcNAcaseが72時間培養によって得られる菌体のGlcNAcaseと分子量などの物理化学的諸性質が異なっていることを明らかにした。2022年度には、24時間培養によって得られる菌体のGlcNAcaseの精製を進め、TMG化合物に対する阻害特異性を調べたところ、72時間培養によって得られる菌体のGlcNAcaseと同じ傾向を示した。MK-26株の生産するGlcNAcaseの複数のTMG化合物に対する阻害特異性は既存酵素と異なっており、Subsite構造の違いを反映していると推測され、この酵素の立体構造の解明が期待される。
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