研究実績の概要 |
本研究の目的は、①油脂蓄積酵母(Yarrowoa lipolytica: Yli酵母)におけるHMG-CoAレダクターゼ(ylHmg1)のリン酸化による活性制御機序を解明すること、②同機序に基づいてテルペノイド合成系を強化し、更には油脂合成経路の弱化でテルペノイド合成経路を更に強化し、バレリアノール(テルペノイドの一つ:本研究のターゲット)を高生産するYli酵母を構築すること、および③同酵母およびYli酵母(親株)へアルギン酸と硝酸塩の資化能を付与し、アルギン酸と硝酸塩からバレリアノールを高生産するYli酵母と油脂を高生産するYli酵母を構築することである。うち、①は終了している。 当該年度は、②に関しては、油脂合成経路の弱化によるバレリアノールの高生産を試みるため、ターゲット遺伝子(Yli酵母ではylAcc1)の上流域(-550, -442, -135, -10の各々)をターゲットとするSTEPS法の再現性を確認したところ再現性が得られなかった。そこで、別の方法つまりバレリアノール前駆体合成系の強化(ylacs1、ylHmg1、ylAcl1各遺伝子の強発現)を試みるため、これらの発現用プラスミドをGolden Gate法で構築した。 ③に関しては、アルギン酸分解物DEHを調製する最適条件を明らかにし、本研究で構築したDEH資化能を示すYli酵母を用いてグルコースとDEHの各々から油脂を生産し、油脂組成の定量分析をGC-MSを用いて行った。アルギン酸から油脂を生産すべく、エキソ型アルギン酸リアーゼ各遺伝子をYli型に最適化し、Yli酵母で分泌発現させるべく発現プラスミドの構築を試みたが、配列の困難さもあり、構築には至らなかった。DEHから生産された油脂組成をはじめて定量分析し、グルコース由来の油脂と比較した点に意義がある。
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