研究実績の概要 |
前年度までにオートファゴソームの形成に必須であるAtg2をコードする遺伝子ATG2の欠失株(Δatg2)を作製し,油脂を蓄積しやすいS5%培地での油脂蓄積を評価した。その結果,Δatg2が野生型株に比べて細胞あたりのTAG(トリアシルグリセロール)を多く蓄積していることを見出していた。しかしΔatg2は培養後期には野生型株よりもROSを蓄積し,生菌率が大幅に下がることも見出した。さらにΔatg2は生菌率が大幅に下がる時期から培養上清にTAGを漏出していることを示唆する結果も得られていた。 本年度はATG2の他にマクロオートファジーに関与するAtg15, Pep4をコードする遺伝子の破壊株Δatg15, Δpep4を作製した。Atg15, Pep4はそれぞれ液胞内のリパーゼ,プロテアーゼであり,両因子ともにマクロオートファジーにおけるオートファジックボディの液胞内分解に必須の役割を果たしていると考えられている。そのため,Δatg15, Δpep4でも野生型株に比べて細胞あたりのTAG量が増加することが予想された。前年までと同様に,これらの株を油脂蓄積培地であるS5%培地で培養したところ,Δatg15, Δpep4の細胞あたりのTAG量は野生型株と同等であった。これらのことから,単純にオートファジーを阻害するとTAGの蓄積量が増加するわけではなく,オートファゴソームが形成されて液胞に融合まですれば,オートファジックボディ内のTAGは分解される可能性が考えられた。しかしながらオートファジックボディの分解は従来のオートファジーにおいては必須であることから,Atg2がオートファジー以外の未知の機能を持っており,それがTAGの分解に関与している可能性も考えられた。
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