研究実績の概要 |
本研究は、α-1,3-グルカンを他の生分解性ポリマーと組合わせることで新規の機能を有する生分解性複合樹脂の開発を行うとともに、開発した樹脂の再資源化を環境にやさしく効率よくおこなうための酵素α-1,3-グルカナーゼの高機能化をセットで行うこと目的としている。プラスティック製品不使用の流れが加速するなか、再資源化しやすい代替生分解性樹脂の開発が注目されるようになり、新たな素材としてα-1,3-グルカンも漸く機能性樹脂の素材として注目され始めるようになったが、その報告例はまだ僅かである。その分解に関わるα-1,3-グルカナーゼの構造と機能に関するアプローチは皆無であり、基質認識や触媒反応メカニズムに関する研究報告はない。研究代表者らのグループは、すでに、Streptococcus mutans由来のグルコシル基転移酵素(GTF-1)遺伝子を大腸菌Rosetta-gami B (DE3)にクローニングすることにより、調製した組換えGTF-1を用いてα-1,3-グルカンを酵素合成する方法を確立している。しかしながら、本研究課題の目的の1つである生分解性複合樹脂を大量調製するには、組換えGTF-1の生産性を向上させる必要があった。本年度は、GTF-1遺伝子を操作することにより、組換えGTF-1を生産性を向上させることに成功した。その結果、α-1,3-グルカンの収率も最高で40倍に高めることが可能となり、生分解性複合樹脂の合成検討に進むことが可能となった。一方、調製した生分解性複合樹脂の再資源化を可能とするα-1,3-グルカナーゼに関して、新規α-1,3-グルカナーゼを見出し、諸性質を明らかにするとともに、大腸菌における高発現系の構築を行った。また、α-1,3-グルカナーゼとしては初めてとなるX-線結晶構造解析を行い、2種類のα-1,3-グルカナーゼの触媒ユニットの立体構造を明らかにした。
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