研究実績の概要 |
今年度はアンモニア酸化古細菌Nitrososphaera viennensisが保有する電子キャリアタンパク質の発現・精製・酵素学的特性の解明に取り組んだ。標的としたタンパク質は前年度までに天然タンパク質から液体クロマトグラフィーで分離したフェレドキシンタンパク質(AOA_Ele)であり、本遺伝子を各種発現ベクターへクローニングし、大腸菌をホストとしたAOA_Eleの異種発現を試みた。 各種発現ベクター(pET29, pColdI, pCold-TF)、大腸菌株(B21、Origami株)、共発現プラスミド(シャペロンプラスミド、pRKISU)、発現条件(鉄硫黄含有培地)を検討したものの、AOA_Eleを可溶性タンパク質として発現させることはかなわなかった。これは、AOA_Eleが分子内に非常に豊富なシステイン残基を有しており、大腸菌ではジスルフィド結合を含むフォールディングが困難であったことが原因として考えられた。本課題を解決するためOrigami株を用いた発現も検討したが、改善は認められなかった。また、AOA_Eleは鉄-硫黄クラスター(Fe-S)を含むタンパク質であり、大腸菌のFe-Sクラスター挿入に関わる遺伝子群を共発現させることでAOA_EleへのFe-Sの挿入を試みたが、発現したAOA_EleにはFe-Sの挿入は認められなかった。Nitrososphaera viennensis AOA_Eleを機能性タンパク質として発現させるためには古細菌由来のシャペロンタンパク質、Fe-S挿入マシナリーを共発現させることが必要であると考えられた。また、ホストとして大腸菌を用いることの限界が明らかであり、古細菌を発現ホストとした発現系の開発が必要であると考えられた。
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