研究実績の概要 |
本研究では、地下嫌気環境で硫酸還元菌が引き起こす金属腐食 (設備劣化) のメカニズム理解に資するため、腐食環境から単離した固体金属から電子を引き抜くことで腐食を促進する活性を持つ3種の硫酸還元菌Desulfovibrio sp. EE-1株、Desulfovibrio sp. SDB-1株、Desulforhabdus sp. SDB-2株を対象とした。これら3株は単一電子源として金属鉄を利用することは共通しているが、それぞれ腐食速度、腐食形態が異なる硫酸還元菌である。これら硫酸還元菌の腐食様式を電気化学的側面から解析するために、炭素鋼片を用いた腐食試験を行い、その腐食過程を電気化学的手法(LPR, EIS, CV)により解析した。その結果、株ごとに腐食電位や腐食電流の推移が異なることが明らかとなり、それぞれの腐食様式の差異を反映しているものと推定された。また、これら3株のうちSDB-1株とSDB-2株については、それぞれ単独で培養した場合と比較して、混合時に腐食活性が促進される現象を新たに発見した。この現象は硫酸還元菌による腐食機構に新しい知見を提供するものと考えられる。また、これら硫酸還元菌の腐食に関与する遺伝子、特に固体金属からの電子の引き抜きに関与する遺伝子の特定に必要なトランスクリプトーム解析を次年度より実施するため、その基礎情報としてこれら硫酸還元菌3種のゲノム配列解析を進めた。
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