研究課題/領域番号 |
19K05813
|
研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
湯川 格史 広島大学, 統合生命科学研究科(先), 助教 (50403605)
|
研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
|
キーワード | 染色体分配 / 紡錘体 / 微小管 / キネシンモーター / 5型キネシン / 微小管ポリメラーゼ / RNA結合タンパク質 / ストレス顆粒 |
研究実績の概要 |
本研究では、姉妹染色体の均等分配に必須な紡錘体微小管形成において、従来とは異なる5型キネシンに依存しない新たな紡錘体形成機構に着目し、その包括的理解を目指して分裂酵母を用いて研究を行っている。昨年度の解析により、5型キネシンcut7温度感受性変異を抑圧する機能未知RNA結合蛋白質(Dri1/Nrp1およびRct1)の変異遺伝子を取得した。本年度はDri1の機能解析を中心に、これらのRNA結合蛋白質が紡錘体微小管形成にどのように関わっているかについて詳細に調査し、以下の成果を得た。 (1)cut7dri1二重変異株における紡錘体微小管および関連モーター蛋白質の細胞内動態について精査した結果、14型キネシンKlp2の紡錘体局在量が著しく低下することを見出した。dri1欠損によるKlp2発現量への影響は観察されないことから、Dri1は紡錘体微小管へのKlp2のローディングに関与する可能性が示唆された。以上の結果から、dri1欠損下では紡錘体形成においてCut7と拮抗的に働くKlp2の機能が低下し、cut7変異を抑圧したと考えられた。 (2)Dri1蛋白質は細胞周期を通じて主に細胞質に局在し、Rae1依存的なmRNA核外輸送システムを欠損させると核内に蓄積したことから、核-細胞質間をシャトルする分子であることが判明した。また、Dri1のRNA結合領域を変異あるいは部分欠失させた変異体の解析から、Dri1のRNA結合能がその細胞内局在および機能に重要であることを明らかにした。 (3)高温等のストレス条件下においてDri1蛋白質は細胞内で凝集し、シャペロン蛋白質を含む蛋白質凝集中心およびストレス顆粒と共局在することを見出した。また、dri1欠損株が野生株よりも高温耐性を示したことから、Dri1には高温ストレス条件下において細胞増殖を制限する働きがあることを見出した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画通りに進んでおり、期待通りの成果が上がっている。
|
今後の研究の推進方策 |
今後は以下の計画に従って実施する。(1) Rct1の機能解析を行い、cut7温度感受性変異を抑圧する理由について調査する。(2) Dri1およびRct1が転写や転写後調節などの遺伝子発現制御に関与する可能性について調査するとともに、直接結合している標的RNAの同定を試みる。
|
次年度使用額が生じた理由 |
(理由)消耗品の合理化に伴う経費節約、および、新型コロナウイルスの影響により参加した学会がオンライン開催に変更されたことによる旅費軽減のため。 (使用計画)主に消耗品として使用し、得られた研究成果を論文発表するための英文校閲料や投稿料にあてる。
|