研究課題/領域番号 |
19K05815
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研究機関 | 愛媛大学 |
研究代表者 |
野澤 彰 愛媛大学, プロテオサイエンスセンター, 講師 (30432800)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | コムギ無細胞系 / 脂質平面膜法 / ナトリウムチャネル / クロライドチャネル |
研究実績の概要 |
我々はコムギ無細胞系にリポソームを添加することで機能的な膜輸送体タンパク質をリポソーム上に合成する技術の開発を行ってきた。本研究では、我々が独自に開発してきたこのコムギ無細胞合成系を基盤とした膜タンパク質調製技術と、電気生理学的手法を融合させることで、汎用性の高いin vitroチャネル解析システムの構築を試みる。再現性の高い微量活性検出システムの構築は、イオンチャネルを標的とした薬剤スクリーニング系の開発に繋がるものと期待している。 本研究ではヒトのナトリウムチャネルとクロライドチャネルをモデルタンパク質として使用することとした。昨年度はコムギ無細胞系でこれらのタンパク質が合成できるこ と、また合成されたタンパク質がリポソーム膜上に合成されていることを確認した。本研究では、これらのタンパク質のチャネル活性を、Nanion Technologies 社のOrbit miniを利用して検出することを試みている。Orbit miniを利用することで脂質平面膜法によりチャネル1分子の輸送活性を電流として計測することが可能 となる。昨年度は、このシステムを利用してナトリウムチャネルのナトリウムイオン輸送活性の検出をに成功した。今年度は、クロライドチャネルのクロライドイオンの輸送活性の検出を試みた。我々が解析対象としているクロライドチャネルは5量体を形成して機能するタイプのものであり、ヒトでは19種のサブユニットが報告されている。それらの中で、解析報告の多い組み合わせに含まれる10種のタンパク質を無細胞系で合成し単独または複数種のタンパク質を混合しチャネル活性の測定を行った。活性測定は、合成後に混合する場合や、mRNAを混合し同時に合成するなどサブユニットの組み合わせを変えて行ったが、現時点で輸送活性の検出には至っていない。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
昨年度はナトリウムチャネルの輸送活性の検出まで順調に進んだが、今年度トライしたクロライドチャネルでは輸送活性を検出することができなかった。昨年のナトリウムチャネルは単分子でチャネルを形成するタイプのものであるが、今年度解析対象としたクロライドチャネルはヘテロ5量体によりチャネルを形成するタイプのものであり、多量体の形成がうまくいっていない可能性が考えられる。現時点では、無細胞系をベースにした多量体形成の制御技術は確立されていないことから、クロライドチャネルを対象とした解析を続けることは難しいと判断した。
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今後の研究の推進方策 |
2年目までに単分子モデルチャネルとして、ナトリウムチャネルの活性の検出までを達成できている。多量体のモデルチャネルとしてはカリウムチャネルのアッセイ系の構築を試みる。ナトリウムチャネルに対しては、予定通り阻害剤のアッセイ系の構築を進めていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルスの感染拡大により、大学が一時的に閉鎖状態になり、研究を中断しなければならない期間が生じたことによる。
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