研究課題/領域番号 |
19K05818
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研究機関 | 創価大学 |
研究代表者 |
丸田 晋策 創価大学, 理工学部, 教授 (40231732)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 機能性抗癌剤 / キネシン / 光制御 / フォトクロミック分子 / 分子モーター / 細胞有糸分裂 / アゾベンゼン / スピロピラン |
研究実績の概要 |
これまでに、二種類のフォトクロミック分子、スピロピランとアゾベンゼン誘導体をカップリングさせることに より、複数の光異性化状態を形成する多段階光スイッチ機構を持つEg5阻害剤SPSABは、VIS、UV、およびin the darkで、SP-Trans、MC-Cis、MC- Transの異なる3つの異性化状態を示した。 そしてSPSABのin vitro実験において、Eg5-ATPase活性は、強く、弱く、中程度に制御されることが示された。従来型キネシン共存下においてin vitro motility assayを行うことにより微小管と解離した状態でキネシン Eg5を阻害することが示されている。 そこで、当該年度は、SPSAB の阻害機構を明らかにする速度論的解析と細胞レベル効果を調べる研究を行った。 1.ストップフローを用いて、キネシンEg5阻害剤が、各異性化状態においてキネシン Eg5のATP加水分解サイ クルのどのステップを阻 害しているか明らかにするための基礎実験を行った。Eg5に結合した時に効果的に蛍光が変化するATP誘導体の検索を行った。 2. 阻害剤結合部位のドッキングシミュレーション解析 In silicoによる解析によりキネシン Eg5上の可能な結合部位を解析を行う。現在連携しているドッキン グシミュレーションの専門家との共同研究として実施した。 3.長崎大学の研究協力者と連携してHela細胞を用いて多段階スイッチ機構を持つ阻害剤が及ぼす細胞分裂へ光可逆的な影響を解析する予備的な実験を行った。 これらの結果からSPSABは、ループ5, α2, α3から形成されるポケットに結合していること、そして細胞レベルで光可逆的に作用することが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1.ストップフローを用いて、キネシンEg5阻害剤が、各異性化状態においてキネシン Eg5のATP加水分解サイ クルのどのステップを阻 害しているか明らかにするための基礎実験を行った。Eg5に結合した時に効果的に蛍光が変化するATP誘導体の検索を行った。これまで研究室でミオシンや植物(イネ)キネシンで利用してきた蛍光標識ATP誘導体、Mant-ATPとNBD-ATPは、Eg5に結合した時、大きな蛍光変化を示さず、Eg5の速度論的解析に適していないことが分かった。 2. In silicoドッキン グシミュレーションによる解析によりキネシン Eg5上の可能な結合部位を解析を行った。現在連携しているドッキン グシミュレーションの専門家の協力によりSPSABが安定に結合する部位を推測し、生化学的な実験データを反映する解析結果を得ることができた。 3.長崎大学の研究協力者と連携してHela細胞を用いて多段階スイッチ機構を持つ阻害剤が及ぼす細胞分裂へ光可逆的な影響を解析する予備的な実験を行った。そして、光可逆的に細胞増殖を抑制する結果が得られた。
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今後の研究の推進方策 |
研究室に保有している蛍光標識ATP誘導体、Mant-ATPとNBD-ATPは、Eg5の速度論的解析に適していないことが、しめされたので、新たな蛍光標識ATPアナログの合成を試みる。また、Eg5のATP結合部位近傍の活性に影響を与えない部位にトリプトファンを導入したEg5変異体を調製して、既存のMant-ATPとの蛍光エネルギー移動によるSPSAB阻害機構の速度論的解析を行う。 APSABが細胞増殖を光可逆的に阻害することが予備的な実験で示されたので、核、微小管などの細胞内因子を特異的に蛍光標識して、細胞周期のどの段階を阻害しているか明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍により研究成果報告を行う学術学会がオンライン開催となり、旅費を使用しなかったため。 コロナ禍の影響で研究協力者の施設で行う予定の細胞レベルでの実験を実施できなかったため。 当該年度にコロナ禍により実施できなかった実験で使用する予定である。
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