研究課題
キネシンEg5は、がん細胞の細胞分裂に関係する紡錘体形成を担うATP駆動型のモーター蛋白質である。キネシンEg5を得意的に阻害する化合物は抗がん剤として注目されている。本研究では光応答性分子である二つの異なるフォトクロミック分子を融合させたこれまでに無い高効率、且つ多段階の光スイッチ機構をもつフォトクロミックEg5阻害剤の開発を行い、細胞レベルでEg5の活性を光可逆的に制御することを試みた。初めにスルホン化アゾベンゼンとスピロピラン誘導体をカップリングさせた化合物SPSABを合成した。そしてSPSABは、可視光線照射、紫外線照射、およびin the darkで、SP-Trans、 MC-Cis、MC- Transの異なる3つの異性化状態を示した。これらの3つの異性化状態は、Eg5のATPaseに対してそれぞれ異なる阻害活性を示した。さらに、生理的な作用を反映するガラス基盤に固定したEg5上を運動する微小管の観察, in vitro assayにおいても、3状態のSPSABにより異なる微小管滑り運動の阻害活性が観察された。異なる異性化状態を示す異なる二つのフォトクロミック分子をカップリングすることにより、多段階のスイッチ機構を持つキネシンEg5阻害剤が具体的に合成できることが示された。さらに最終年度では、これまでの研究を結果を基に、高い阻害活性と高いスイッチ効率持つ化合物の開発を行なった。スルホン化アゾベンゼンの両端にそれぞれスピロピランを導入したSP-AB-SP を合成した。SP-AB-SP はSPSABと同様に異なる3つの異性化状態を示し、これらの異性化状態は異なるEg5-ATPase阻害活性を示した。また、SPSABよりもEg5に対して高い親和性と特異性を示した。本研究は計画どおりに遂行され、有糸分裂キネシンEg5の多段階光スイッチ機構を持つ阻害剤の開発を達成できた。
がん治療の標的因子である紡錘体キネシンEg5を特異的に阻害する抗がん剤を開発するためにAIが膨大な化合物の中から、我々が推測しているキネシンEg5の機能部位に結合する96個の化合物を抗がん剤候補として米国AI創薬企業が、AIスクリーニングした。そして、我々は、提供されこれらの候補化合物が実際にEg5を阻害するかの検証実験を行い、2個の化合物が阻害剤として機能することを明らかにした。
すべて 2024 2023 その他
すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (1件) (うち国際共著 1件、 査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (7件) (うち国際学会 3件) 備考 (1件)
Scientific Reports
巻: 14 ページ: 7526
10.1038/s41598-024-54655-z
https://www.soka.ac.jp/news/2024/04/9623/