研究課題/領域番号 |
19K05820
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研究機関 | 神戸薬科大学 |
研究代表者 |
士反 伸和 神戸薬科大学, 薬学部, 教授 (20547880)
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研究分担者 |
肥塚 崇男 山口大学, 大学院創成科学研究科, 助教 (30565106)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | ペチュニア / タバコ / ペルオキシソーム / 輸送体 / ABC輸送体 |
研究実績の概要 |
植物の様々な一次・二次代謝産物は、オルガネラ間を動きながら、複雑な経路を経て生合成されている。オルガネラの中でも近年に特に注目を集めているのが、輸送体などを含めてこれまで知見が少ないペルオキシソームである。本研究では、ペルオキシソームへの生合成中間体の輸送体としてABC輸送体ABCD1に着目し、その機能と生理的役割の解明を目指している。対象としては、虫害応答などのモデル植物であるタバコ、香気成分のモデル植物であるペチュニア、さらにABCD1ノックアウト体の解析が報告されているシロイヌナズナを用いる。今年度は、これら3種類の植物からABCD1の単離を行った。pENTR1Aに各植物のABCD1を組み込んだのち、シーケンスにより全長の配列確認を行った。また、昆虫細胞発現用のBacmidにも組み込み、次年度の輸送機能解析に向けて準備を進めた。組換え体の作出としては、アグロバクテリウムを介した形質転換により、タバコおよびペチュニアにおいてABCD1発現抑制体(RNAi)の作出を試みた。形質転換効率が想定よりも低く、得られた形質転換体の数は少ないが、いくつかの個体が得られたので次年度に解析を進めるとともに、さらに形質転換体の作出を進める。またペチュニアABCD1について、茎、葉、花など組織における発現をリアルタイムPCR法により解析し、遺伝子レベルでの組織発現を明らかとした。将来的なメタボローム解析に向けて、Orbitrapを用いてタバコ培養細胞の細胞内代謝物のLC条件やMS条件なども検討をした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
タバコ、ペチュニア、シロイヌナズナ各植物より、webデータベースに登録されているのとは異なる配列がクローニング中に複数みられたため、全長配列の単離、決定に想定よりも時間がかかった。しかしそれぞれ単離はできたため、次年度の機能解析を効率的に進めることで遅れを取り戻す予定である。
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今後の研究の推進方策 |
1) ABCD1の輸送機能解析 タバコ、ペチュニア、シロイヌナズナのABCD1をそれぞれN末His-tag付きで昆虫細胞に発現させる。膜ベシクルを調製し、輸送機能を解析する。基質候補としては、ジャスモン酸中間体OPDA、フェニルプロパノイド中間体シンナモイルCoAおよびそれらの関連物質などを検討する。輸送解析からそれぞれの植物ABCD1の至適pH、Km値、Vmaxなどの輸送特性を明らかとすることを目指す。 2) 過剰発現、発現抑制した植物体およびタバコ培養細胞の作出と解析 タバコおよびペチュニアABCD1について、タバコ植物および培養細胞、ペチュニア植物を用いて過剰発現、発現抑制体を作出する。ペチュニアについては、前年度の実験系を改良しながらより多くの形質転換体の作出を試みる。得られた形質転換体における香気成分を含めた代謝物の変化をLC-MSやGC-MS、Orbitrapなどを用いて解析し、ABCD1発現が代謝全体に与える影響を調べる。これら解析を統合して、ABCD1によるペルオキシソーム膜輸送機構および、代謝物変化を介した植物の環境適応機構の解明を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
昆虫細胞での発現系を開始するタイミングでコロナウイルス騒動が起こり、実験が止まりました。そのため、次年度使用額が生じています。次年度に実験を再開し、培地の購入などに用いる予定です。
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