研究課題/領域番号 |
19K05827
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
古賀 雄一 大阪大学, 工学研究科, 准教授 (30379119)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | scaffold protein / thermalstability / phage display / antibody |
研究実績の概要 |
人工抗体として活用できる可能性のある、標的結合scaffoldタンパク質の開発を目的とし、免疫グロブリンと相同性の高い立体構造を持つSD1ドメインの安定性解析を行った。異種発現させたSD1の可溶性画分を精製し、熱変性温度をCDスペクトル測定によって決定したところ、77.8℃と高い安定性を示すことがわかった。 SD1をM13ファージコートタンパク質PIIIに融合した、表層ディスプレイ系を構築した。SD1とラクダ抗体可変領域(VHH)を構造比較して、抗原結合部位に相当するループ構造を決め、ランダム変異を導入した。変異SD1を提示したファージを用いて、TNFαに特異的に結合する変異SD1をスクリーニングした。バイオパニングの過程でファージの濃縮が見られた。選抜された変異SD1 20クローンを選び、変異箇所のアミノ酸配列を解析したが、特定の変異配列を見出すことはできなかった。この変異ライブラリーを、他の標的タンパク質(BSA,カゼイン)に変えても同様の現象が起こることから、非特異的な吸着をしていることが示唆された。この結果は提示SD1が変性したために非特異結合が形成されたためと考えられる。 SD1の可溶性を向上させるため、SD1の疎水コアの強化、表面空孔を塞ぐ、表面のトリプトファン除去をデザインした15種類の変異体を構築した。それぞれを大腸菌で発現し可溶性を比較したが、明確な改善は見られていない。さらなる可溶性改良のため、新しい変異SD1(複数の変異体の組み合わせ、ランダム変異導入)を構築した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度中に、変異ライブラリーから特異的結合能力を持ったscaffold protein を取得することを目的としていたが、タンパク質本体のフォールディングが予想よりも悪かったため、当初予定していなかったSD1の可溶性改変が必要になった。 可溶性の改変を進めるとともに、新規のscaffold 候補タンパク質を探す必要もある。
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今後の研究の推進方策 |
SD1の可溶性向上のための変異構築と、可溶性の評価を行う。大腸菌菌体内でSplit GFPを用いて可溶性タンパク質を検出する系を利用して、変異の幅を広げてスクリーニングを行う。また、SD1以外の候補タンパク質の選択を進める。これらの候補タンパク質についてはすでに構造のわかっているタンパク質のうち、分子量サイズ、形状、安定性を考慮し現在32種類の候補分子を選択している。この中から大腸菌での発現性、ファージ提示性などを試験し、最終候補分子を選抜する。 可溶性の高いscaffoldが得られた場合には、ファージ提示変異ライブラリーを構築し、ターゲットタンパク質に結合した分子の選抜、特性解析を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
年度末に大学での研究活動自粛があり、予定していた変異SD1の安定性の解析、DNA配列解析などの実験を行うことができなかった。また、予定していた日本農芸化学会が開催中止になったため、予定していた調査、打合せができなかった。 実験については、研究活動再開後に当初の予定通り実施する。学会中止に伴う打合せについてはオンライン会議システムを利用して実施する。
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