研究実績の概要 |
ビタミンD3は、体内で25-ヒドロキシビタミンD3(25D3)を経て、1α,25-ジヒドロキシビタミン(1,25D3)へと代謝されることで、種々の生理作用を発揮する。CYP24A1は25D3や1,25D3を連続的に代謝する酵素であり、近年、本酵素と疾患との関連が報告され始めた。疾患リスクの診断や予防を行う上で、血中25D3や1,25D3量に加えて、複数存在するCYP24A1由来代謝物を定量的に解析することが重要である。本研究では、血中に1,25D3の約500倍量存在する25D3について、その生体内でのCYP24A1依存性および非依存性の代謝を明らかにすることを目的とし、野生型およびCYP24A1遺伝子欠損(KO)ラットに25D3を単回経口投与した。経時的に代謝物をLC/MS/MSで一斉定量分析した結果、野生型ラットの血中には、5種の代謝物が検出されたが、CYP24A1 KOラットではいずれの代謝物も検出されなかった。野生型ラットで検出された5種の代謝物のうち、26,23-ラクトン-25D3は、他の代謝物と異なりラット由来CYP24A1 発現系で検出されず、また、最高血中濃度到達時間(Tmax)値が他の代謝物の値よりも高かったことから、CYP24A1だけでなく他の酵素の関与が示唆された。本代謝物は25D3から23,25-ジヒドロキシビタミンD3(23,25D3)、23,25,26-トリヒドロキシビタミンD3 (23,25,26D3)を経て生成され、詳細な解析結果から、23,25,26D3から26,23-ラクトン-25D3への反応にCYP3Aが関与することがわかった。近年、CYP3A4遺伝子変異が原因のくる病が発見され、今回の結果と併せて、CYP24A1およびCYP3A依存性代謝物の定量がビタミンDと疾患とを考える上で重要であると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
2年目は、1年目の結果を踏まえ、25D3の各代謝物の生理作用を調べる。生理作用としては一般的なビタミンDレセプターへの結合能を評価、25D3や1,25D3の結合能と比較する。生体内での血中濃度とあわせて考慮することで、これまで知られていなかった代謝物の生理作用への寄与や生体内での役割を明らかにする。1年目は25D3代謝物として、CYPによる代謝物を定量したが、近年、25D3の3位硫酸抱合体がCYP24A1の主要代謝物24,25-ジヒドロキシビタミンD3と同程度存在することが報告されており、2年目は硫酸抱合体についても定量分析系を確立し、血中濃度を定量することで、その個人差や疾患との関連も明らかにしたい。
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