研究実績の概要 |
ビタミンD3は、25-ヒドロキシビタミンD3(25D3)を経て、1α,25-ジヒドロキシビタミンD3(1,25D3)へと代謝された後、種々の生理作用を発揮する。主に作用を発揮するとされるのは1,25D3であり、骨や皮膚疾患の治療薬として一般的に用いられているが、当研究室では、25D3が、くる病・骨粗鬆症に対して副作用の少ない予防・治療薬となり得る可能性を示唆してきた。25D3、1,25D3ともに、CYP24A1によって連続的な代謝を受け、不活性化される。本研究では、25D3摂取時、CYP24A1機能不全が及ぼす影響を調べた。最終年度は、長期投与の影響を調べる目的で、野生型およびCYP24A1遺伝子欠損(KO)ラットに、25D3を20μg/kg/dayにて週3回、6か月間経口投与を行った。その結果、CYP24A1 KOラットでは、投与後、継続的に血中カルシウム濃度の上昇がみられ、投与20週間後程度から体重減少が認められた。腎臓のカルシウム吸収調節遺伝子の発現が著しく上昇し、腎臓のカルシウム沈着もみられた。一方で、野生型ラットではこのような影響は全くみられなかった。一般的に、血中1,25D3濃度の上昇を介して上述の副作用が起こることが知られており、当初、CYP24A1 KOラットでは1,25D3が不活性化されなかったことが副作用の原因になったと推測していた。しかしながら、血中25D3と1,25D3濃度を定量したところ、CYP24A1欠損によって血中25D3濃度のみが顕著に上昇したことがわかった。 近年、ビタミンD不足・欠乏の人が増えており、ビタミンD3や25D3の積極的摂取が重要になる。一方で、今回の結果から、CYP24A1機能不全の人がビタミンD3や25D3を摂取する場合注意が必要であり、事前にCYP24A1依存的代謝物定量などによる診断が重要になると考えられる。
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