研究課題/領域番号 |
19K05830
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研究機関 | 京都府立大学 |
研究代表者 |
森田 重人 京都府立大学, 生命環境科学研究科, 准教授 (20295637)
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研究分担者 |
北島 佐紀人 京都工芸繊維大学, 応用生物学系, 准教授 (70283653)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 種子 / 発芽 / 休眠 / レドックス調節 / イネ |
研究実績の概要 |
植物の種子休眠と発芽は、穀類種子の穂発芽や作物の生育に影響することから、農業上重要な問題であるが、主要穀物であるイネではその調節機構について不明な点が多い。本研究ではイネ種子の休眠・発芽の調節機構を解明するために、以下の2点について解析を行っている。 1) OsGRXC2;2の標的タンパク質の探索:研究代表者の森田は先行研究で、イネ種子において発芽抑制に働いているタンパク質グルタレドキシンOsGRXC2;2を明らかにした。グルタレドキシンはタンパク質のレドックス調節に機能していることから、本研究ではOsGRXC2;2の標的タンパク質を、プロテオーム解析により同定することとした。 令和元年度には、OsGRXC2;2過剰発現系統、発現抑制系統、コントロール系統を育成し、登熟種子をサンプルとして採取した。OsGRXC2;2と相互作用するタンパク質を調製するため、OsGRXC2;2に対する抗体を用いてイネ種子タンパク質の共免疫沈降を試みた。しかし沈降画分にはタンパク質が検出されなかったことから、抗体との結合条件の検討が必要であると考えられた。 2) 新規休眠性変異体の遺伝解析:研究代表者の森田の先行研究で、ゲノム編集によりエチレン受容体OsERS1のノックアウト変異体イネを作出したところ、種子休眠が強くなった系統(N41系統)が得られた。しかし休眠性の上昇はOsERS1変異体の他の系統では見られなかったため、同遺伝子の変異が原因ではないと考えられた。そこでN41系統を新規休眠性変異体として遺伝解析を行うこととした。 令和元年度には、N41系統のT2個体を23個体育成し、完熟直後の休眠種子を採取して休眠性を調査した。その結果、23個体中、顕著に休眠性の上昇した個体が1個存在したため、これを休眠性変異体の候補として選抜した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
OsGRXC2;2標的タンパク質の探索については、共免疫沈降による相互作用タンパク質の調製、2次元電気泳動による検出を計画していたが、共免疫沈降が予想以上に難航しており計画よりもやや遅れている。なお2次元電気泳動は、予備実験を行っている段階である。また休眠性変異体N41系統の遺伝解析については、計画通りに進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
1) OsGRXC2;2の標的タンパク質の探索:共免疫沈降については、結合・溶出条件の検討を行い、再度OsGRXC2;2と相互作用するタンパク質の捕捉を試みる。得られた沈降画分を2次元電気泳動により分画しタンパク質を検出し、標的タンパク質の候補とする。またこれとは別にOsGRXC2;2により還元されるタンパク質を検出するため、OsGRXC2;2過剰発現系統、発現抑制系統、コントロール系統からそれぞれ種子タンパク質を調製し、遊離のSH基の修飾剤を結合させ、2次元電気泳動により分子量の増加を検出する。これにより系統間で酸化還元状態に差の見られるタンパク質をOsGRXC2;2の標的タンパク質とする。得られた標的タンパク質のスポットを切り出し、質量分析によりタンパク質の同定を行う。 標的タンパク質が同定された後は、その過剰発現系統と発現抑制系統を作出し、発芽特性に変化が見られるか調査する。 2) 新規休眠性変異体の遺伝解析:令和元年度に休眠性の上昇が見られたN41系統のT2個体の後代を育成し、T3世代においても休眠性の上昇が見られる系統を選抜する。これにより休眠性が上昇した変異体系統を確立する。 次に確立した変異体系統と野生型イネを交配してF2個体を育成し、休眠性の上昇した変異個体と上昇していない非変異体を得る。次世代シーケンサーを用いて、変異体と非変異体の全ゲノム配列を決定し、変異遺伝子を同定する。
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次年度使用額が生じた理由 |
理由) 研究が当初計画に比べやや遅れており未実施の実験があるため、試薬・器具などの物品費が予定を下回る金額となったため。
使用計画) 計画よりも遅れている実験については次年度に実施するため、それに伴う試薬・器具の購入に当てる予定である。
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