研究課題
概日時計が多くの研究者から注目されてきたのは、その定義となっている3つの特徴(①概日振動、②温度補償性、③同調機能)を有するためである。これらのどの特徴も単純な生化学反応では理解しがたく、未だ本質的な答えは得られていない。特に②の温度補償性は、温度が変化しても周期長が変化しない、すなわち、振動の速度が温度に対して一定に保持される、この特性の基盤となる分子機構についてはほとんどあきらかになっていない。概日時計をもつ最も単純な生物であるシアノバクテリアは、分子レベルで概日時計を解析できる格好の生物となっている。シアノバクテリアでは3つの時計タンパク質KaiA、KaiB、KaiCによりin vitroにおいてATP存在下で約24時間の概日振動を再構成できる。概日時計の24時間の周期長が中心振動体であるKaiCのATPase活性という生化学的なプロセスによって決定されており、このATPase活性に温度補償性が認められることが知られている。KaiC六量体には、Blue-native PAGE (BN-PAGE) 法によって分離できる2つの状態が存在することを見出し、ATP加水分解前の状態をgs (ground-state) 型KaiC、加水分解後をcs (competent-state) 型KaiCと名付け、cs型KaiCにのみKaiBが結合することを報告した。本研究では、KaiCの2つの存在状態gs型KaiC およびcs型KaiCにおいて、ATPase活性が大きく異なっており、それらの和としてのKaiCの見かけの活性が温度非依存的になっているのではないかという仮説を検証することを目的としている。今年度は、KaiCの精製方法を再検討し、次にATPase活性を詳細に解析した。その結果を元に、タンパク質標品の取扱方法やHPLCでの測定方法を改良し、新規解析で得られたデータと既存のデータを精査した。
2: おおむね順調に進展している
初年度である2019年度は当初方針に沿って、KaiCのATPase活性測定方法を精査した。今後残り期間において目的が達成されると見込まれるため。
引き続き、当初計画に沿った研究を継続する。
所属機関において研究支援費が得られ、研究補助者の人件費にあてることができたため。
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すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 1件、 査読あり 3件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (3件) (うち招待講演 1件)
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