研究課題
概日時計の温度補償性は、温度が変化しても周期長がほとんど変化しない、すなわち、振動の速度が温度に対して一定に保持されることである。シアノバクテリ アでは3つの時計タンパク質KaiA、KaiB、KaiCにより in vitroにおいてATP存在下で約24時間の概日振動を再構成可能である。概日時計の24時間の周期長が中心 振動体であるKaiCのATPase活性によって決定されており、このATPase活性に温度補償性が認められることが知られている。本研究では、この分子機構を明らかに することを目的としている。昨年度から継続しているKaiCに相同性の高い他生物のKaiC-likeタンパク質の解析を実施した。このタンパク質の温度補償性を検証するために、タンパク質を精製しKaiCと比較した。KaiCが6量体を形成しているのに対して、ゲルろ過クロマトグラフフィー解析において、KaiC-likeタンパク質はそれよりもさらに多量な複合体を形成していることが見いだされた。精製したタンパク質を用いて、25℃、30℃、35℃でのATPase活性を測定した。その結果、温度上昇により反応速度が増加したことから温度補償性は認められず、KaiCとは異なる性質を示すことが明らかになった。さらに、酸化および還元状態での活性を測定したところ、酸化還元が活性に影響を及ぼすことが示され、このKaiC-likeタンパク質は時計の原型である可能性が示唆された。一方、KaiCの2つのリン酸化部位STをSSに変化させた変異化型タンパク質のATPase活性の温度補償性も検討した。
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Proc. Natl. Acad. Sci. USA
巻: 119 ページ: e2119627119
10.1073/pnas.2119627119