エンカプスリンは細菌および古細菌でみられる細胞内構造体であり、タンパク質分子が自己集合して形成されるタンパク質ナノ粒子である。また、粒子内部に特異的に別のタンパク質(荷物タンパク質)を内包する性質を有している。そこで本申請課題では、生化学的・構造生物学的研究によってエンカプスリンナノ粒子のタンパク質工学応用への基盤を構築することを目的とした。 当該年度においては、①エンカプスリンナノ粒子の立体構造解明、および②エンカプスリンの荷物タンパク質内包性の制御法確立、に関する検討を進めた。まず①に関しては、予備的検討で調製していたエンカプスリンナノ粒子について、大阪大学超高圧電子顕微鏡センターにおいて先端バイオイメージング支援プラットフォーム(ABiS)による支援を受け、クライオ電子顕微鏡Titan Kriosを用いた粒子像撮影を実施した。さらに単粒子解析法によって、エンカプスリンナノ粒子の電子密度マップを求めることができた。現在、分子構造の構築を進めている。また、②については、エンカプスリンに任意の荷物タンパク質を内包させる大腸菌発現系を構築し、その発現系を用いて複数の荷物タンパク質の発現を試みた。これにより、緑色蛍光タンパク質(GFP)、ミオグロビン、チオレドキシン等を荷物タンパク質として取り込ませることに成功した。また、GFPを荷物タンパク質のモデルとして用い、本大腸菌発現系を改変することで、GFPの内包量を変化させることが可能であることが分かった。即ち、エンカプスリンナノ粒子への荷物タンパク質の内包量を調節することが可能であると考えられた。
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