研究課題
ストライガやオロバンキといった根寄生植物の種子は植物の根から浸出されるストリゴラクトン(SL)と呼ばれる二次代謝産物を認識して発芽する。これまでにストライガ耐性形質を示すソルガムの変異体から、その耐性を付与した原因遺伝子LGS1が同定されている。LGS1遺伝子はSLの一種である5-デオキシストリゴール(5DS)の立体選択的な環化反応に関わる生合成酵素をコードしていると考えられるが、その機能は解明されていない。本研究では、根寄生雑草を制御する技術の基盤となりうるLGS1酵素の機能の解明を目的としている。これまでにソルガムlgs1変異体植物において蓄積していた基質候補のSL前駆体をLC-MS/MSを用いて同定している。その候補基質と大腸菌やベンサミアナタバコを用いて発現させたLGS1タンパク質をインキュベートしたところ5DSの生成が確認されたが、その立体異性体である4-デオキシオロバンコール(4DO)も検出された。LGS1の基質の構造からこれまでに研究代表者が解析してきたシトクロムP450酵素のCYP711Aの関与が考えられた。そこでソルガムから4つのCYP711A遺伝子をクローニングして、酵母を用いたP450発現系によりそれらを発現させて機能解析を行った。その結果、そのうち一つの酵素がLGS1の基質を生成することが分かった。SLはβ-カロテンから生合成される。そこで、SL生合成の上流酵素遺伝子D27, CCD7, CCD8をソルガムからクローニングして、4つのCYP711AそれぞれとLGS1と共にベンサミアナタバコを用いた一過的発現系を用いて発現させて、内生β-カロテノイドを出発基質として植物体内における変換実験を行った。その結果、発現タンパク質を用いた試験管内での代謝実験の結果と同様に5DSと4DOの生成が確認された。
2: おおむね順調に進展している
昨年度はLGS1の酵素活性について試験管内での解析を進めたが、本年度はその上流で働くSL生合成酵素を用いて植物体内での解析を進めた。研究の展開は順調であり、研究成果は学会で発表を行った。また関連研究の論文を報告した。
上流のSL生合成酵素は立体選択的な環化には関与しなかったので、ソルガムの5DS生合成はLGS1酵素による変換後に他の酵素により選択的に進むと考えられる。その経路の解明のため、LGS1と共に働く酵素の絞り込みを更に進める。
新型コロナによる研究活動の制限もあったことから、予定より消耗品費が残ったので次年度に繰り越すことにした。次年度の研究のための物品費として使用する。
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すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (4件) (うち国際共著 1件、 査読あり 4件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (3件)
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