研究実績の概要 |
ストライガやオロバンキといった根寄生植物は、宿主植物の根に寄生して養水分を奪うため、世界各地の農作物に甚大な被害を与えている。現在までに根寄生雑草の有効な防除法は確立されていない。根寄生雑草の種子は植物の根から浸出されるストリゴラクトン(SL)と呼ばれる二次代謝産物を認識して発芽する。これまでにストライガ耐性形質を示すソルガムの変異体から、その耐性を付与した原因遺伝子LGS1が同定されている(Gobena et al., PNAS, 114: 4471-4476, 2017)。LGS1遺伝子は立体選択的なSLの環化反応に関わる硫酸基転移酵素をコードしていると考えられているが、その機能は解明されていない。本研究では、根寄生雑草を制御する技術の基盤となりうるLGS1酵素の機能の解明を進めた。 これまでの研究において発見したSL前駆物質と大腸菌で発現させたLGS1タンパク質をインキュベートしたところ、ソルガムの主要なSLである5-deoxystrigol (5DS)の生産が確認された。しかし、同時にその立体異性体の4-deoxyorobanchol(4DO)も検出された(Yoda et al., New Phytologist, 232: 1999-2010, 2021)。これはSL前駆物質の水酸基に硫酸基が付加して脱離し、酵素非依存的にSLの環化が進んだと考えられた。4DOはソルガムからは検出されない。すなわち、5DSだけを生産する経路にはもう一つ、立体を決める酵素が必要であると考えてられた。最終年度では、その酵素の候補について探索を行うとともに、ベンサミアナタバコを用いた一過的発現系により候補タンパク質の機能解析を行った。しかしながら、候補タンパク質による立体選択的な5DS合成は確認できなかった。
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