研究実績の概要 |
抗生物質hypeptinは、環状デプシペプチド(エステル結合を含む環状ペプチド)骨格と4つのβヒドロキシアミノ酸(β位にヒドロキシ基を有するアミノ酸)を特徴としており、ペプチドグリカン前駆体(リピド中間体)を認識して結合し、細胞壁合成を阻害する。本研究では、hypeptinの特殊な環状構造およびアミノ酸残基が、三次元構造形成および標的分子認識においてどのような役割を果たしているかを、原子レベルで解明することを目的としている。 本研究では、hypeptinの類縁体合成を指向して、固相法を用いた全合成を目指している。2020年度は、hypeptinに含まれる2種類のβヒドロキシアスパラギン(β-OH-Asn)の立体選択的合成を行った。(±)-trans-epoxysuccinic acid を D-Arg とのジアステレオマー塩を形成させることにより光学分割した。得られた (2R,3R)-trans-epoxysuccinic acid に対するアンモニアの求核付加反応とそれに伴うエポキシドの開環によって、(2S,3R)-β-OH-Asp を合成した後、官能基の変換と保護を行い、(2S,3R)-β-OH-Asn誘導体を合成した。一方、cis-epoxysuccinic acid に対してアンモニアを求核付加させ、得られたthreo-β-OH-Asp のラセミ混合物をD-Lysとのジアステレオマー塩を形成させることにより光学分割した。その後、官能基の変換と保護によって、(2R,3R)-β-OH-Asn誘導体を合成した。
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