研究課題/領域番号 |
19K05842
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
宮下 正弘 京都大学, 農学研究科, 准教授 (80324664)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | サソリ毒 / ペプチド / 殺虫活性 / 化学ライゲーション |
研究実績の概要 |
サソリ毒液の活性成分として、ジスルフィド結合で架橋されたペプチドと、ジスルフィド結合をもたずにαヘリックス構造を形成するペプチドが存在する。これらに加えて、その両者の構造的特徴をもつ「2ドメイン型」ペプチドも存在する。これまでにヤエヤマサソリより同定した殺虫性ペプチドLaIT3も、この構造的特徴をもち、N末端側にαヘリックス構造、C末端側に3つのジスルフィド結合で架橋された構造をもつ。本研究では、LaIT3の活性発現に寄与する構造要因を明らかにすることを目的として、LaIT3の化学合成をおこなった。LaIT3は84アミノ酸残基で構成されるペプチドであるため、通常の逐次延長による固相法を用いて合成することは難しい。そこで、ペプチドを複数のフラグメントに分けて合成し、それらを順次縮合させることによって長鎖ペプチドを得る化学ライゲーション法を用いることとした。フラグメント合成の容易さを考慮して、それぞれが40残基以下となるよう、縮合部位として12残基目と13残基目の間、46残基目と47残基目の間の2箇所を選択した。これにより各フラグメントの大きさは、N末端側から12残基、34残基、38残基となる。合成は、まずLaIT3(1-12)-thioesterと[13Cys]LaIT3(13-46)-hydrazideを縮合し、[13Cys]LaIT3(1-46)-hydrazideを得た。ここで得られたペプチドには本来含まれないCys残基が存在するため、これを脱硫反応によってAlaに変換してLaIT3(1-46)-hydrazideを得た。さらに、これをLaIT3(47-84)と縮合することで直鎖状LaIT3を得た。最終的にジスルフィド結合の形成反応によってLaIT3を得ることに成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初の予定では、合成したLaIT3の活性評価までおこなう予定であった。しかしながら、LaIT3の合成には成功したものの、収量が想定よりも低く、様々な活性評価をおこなうためには不十分であった。そのため、やや進捗が遅れた状況となっている。
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今後の研究の推進方策 |
2020年度の成果により、LaIT3の化学合成法を確立することができた。今後、合成法のさらなる改良をおこなうことによって、収量の向上を目指す。さらに、LaIT3のN末端ならびにC末端部分ペプチドも合成し、それらの活性評価もおこなう。これらの結果から、LaIT3の殺虫活性に寄与する構造要因が明らかになることが期待できる。また、毒液中にLaIT3と類似した構造をもつ新たなペプチドの存在が示唆されており、その同定も進める予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナ感染症による影響で、参加予定であった学会がオンライン開催となったため、旅費が必要なくなり、その分が次年度使用額となった。次年度使用額は、すべて物品費として使用する予定である。
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