研究課題
ミトコンドリアに局在するリン脂質カルジオリピンは、活性酸素種の発生を受けて過酸化カルジオリピンとなることでアポトーシスの初発反応を担うと考えられている。カルジオリピンは、ミトコンドリア呼吸差の補酵素シトクロムcと特異的な複合体を形成し、過酸化カルジオリピンになると乖離すると考えられている。しかし、過酸化カルジオリピンとシトクロムcとの結合親和性はわかっておらず、詳細な作用機構の解明が必要である。そこで本研究では過酸化カルジオリピンの全合成を実現し、シトクロムcとの結合親和性を明らかにすることを目的とした。これまでの研究で、総工程11ステップの過酸化カルジオリピンのはじめての全合成を達成した。具体的には、市販の(S)-ソルケタールを出発物として順次エステル化によってジアシルグリセロールへと誘導、続く2度のホスホロアミダイト法によるリンエステル化を用いる経路である。ここで、導入するアシル鎖を保護基を導入した過酸化脂肪鎖に変更することができる。本研究ではヒドロぺルオキシ基の保護基この手法であれば、カルジオリピンの4本の脂肪酸について独立的に設計・合成することが可能となった。また、過酸化カルジオリピンの合成に先立ち、ホスホロアミダイト法を一度のみで直ちに脱保護することで過酸化ホスファチジルグリセロールの全合成にも成功した。過酸化ホスファチジルグリセロールは、脂質メディエーターの新たな候補と考えられてきたものの、合成標品が無かったためにその真偽は不明であった。そこで合成した過酸化ホスファチジルグリセロールについての活性評価を行ったところ、有意な炎症誘導活性が新たに明らかになった。
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BBA - Molecular and Cell Biology of Lipids
巻: 1867 ページ: 159158-159164
10.1016/j.bbalip.2022.159158