研究課題/領域番号 |
19K05848
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研究機関 | 富山県立大学 |
研究代表者 |
五十嵐 康弘 富山県立大学, 工学部, 教授 (20285159)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 希少放線菌 / 二次代謝物 / 生理活性物質 / 多様性 |
研究実績の概要 |
前年度までのスクリーニング結果に基づき、新規化合物の生産が予測された希少放線菌株の培養抽出物から、目的化合物を単離し、構造解析へと進めた。その結果、前年度に新規ビスインドール化合物を見出したAllokutzneria属放線菌から、新たに3種類のポリケタイドを単離した。それらは、我々が以前にStreptomycesから単離したpteridic acidの新規類縁体であったが、修飾様式は大きく異なっていた。また、これまでにPhytohabitans属2株から新規ポリケタイド類を発見してきたが、別の株から新たに3種類のナフトキノン類と1種類のインドール誘導体を新規物質として見出した。さらに、Catellatospora属からは初めての新規生理活性物質となる3種類の新規アンサマイシン系マクロラクタムを単離、構造決定した。相対配置の決定ではDFT計算によるNMR化学シフト値の予測を行い、また絶対配置の決定ではECDスペクトルの理論計算を用いた。いずれもレタス発芽種子の根生長を促進した。この研究成果は論文投稿中である。また別のCatellatospora属株からは、2種類の新規ハロゲン化ピロール誘導体を得た。興味深いことに、これらの化合物にもレタス発芽種子の生長促進活性が認められた。加えて、化合物報告のないActinocorallia属からは、6種類の新規テトラミン酸系ポリケチドを単離、構造決定した。そのうちの一つはX線結晶解析により絶対配置を決定し、残りの類縁体はECDスペクトルの比較、NOESY解析により立体構造を決定した。また、Couchioplanes属からは、複数の単鎖不飽和脂肪酸類とトリプトファン誘導体を見出し、論文発表した。以上、得られた新規化合物の立体構造の決定ならびに生物活性評価を現在は進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
分類学的情報に基づき選抜した未研究放線菌属は、予想したように高頻度で新規化合物を生産していた。個々の新規化合物の構造解明、生理活性評価、論文化を順次進めている。よって、本研究はほぼ順調に進展したと判断できる。
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今後の研究の推進方策 |
得られた新規化合物については、立体構造を含めた構造決定を行い、抗菌性、癌細胞への作用、植物生長への影響等の生理活性を評価する。また必要に応じて、生産菌の分類学的位置や二次代謝遺伝子をゲノム情報から解析する。有望な生理活性を示す化合物が得られれば、誘導体合成や構造活性相関の解析を通じて、創薬リードの開発へと展開する。
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次年度使用額が生じた理由 |
実験を担当する研究員が長期欠勤となり、研究の進捗が計画よりも大幅に遅れたため、計画の変更を余儀なくされた。次年度に繰り越した研究費は、研究員の給与として使用する。
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