研究実績の概要 |
生物活性フラボノイドやプレニルフェノール類の合成前駆体調製には、容易かつ大量に得られる原料から出発し、正しい位置でフェノール・メチルエーテルを導入する手法が求められる。中間化合物の反応性や安定性にとって大切な「酸化段階や芳香環の電子密度」の設計と制御、それを実現する保護基の導入や反応条件が重要である。本年度は、芳香環のハロゲン化、および酵素触媒による位置選択的・温和な条件下変換反応を検討した。 1,3-dimethoxybenzeneをI2-H2O2の条件で2ヨウ化物とし、銅触媒存在下メトキシル化によりアレルギー炎症抑制作用を持つ1,2,4,5-tetramethoxybenzeneを合成した。同様の手法は、ノビレチンの合成前駆体であるpentamethoxybenzeneの合成にも有用で、1,2,3-trimethoxybenzeneから出発しメトキシル化の前駆体となる2ヨウ化物の調製には、折戸らのHgO-I2が最も有効であった。対応する臭化物および構造の異なるヨウ化物の調製、メトキシル化も比較した。 一方、高度に酸化されたプレニルヒドロキノンの一種、tournefolin B の合成前駆体となる3-bromo-4-methoxybenolの調製に際し、出発物質として選んだヒドロキノンに対し、Burkholderia cepadia 由来のリパーゼ(Amano PS)を用いたモノアセチル化が有効で、4-hydroxyphenl acetateが高い収率で得られた。臭素化、メチル化して得た3-bromo-4-methoxyphenyl acetate、およびフラン部位とのカップリングによって得られた化合物かrtournefolin Bの調製では、保護基として用いた酢酸エステルの除去にCandida antarctica リパーゼB (Nozozyme 435) を活用した。
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