研究課題
2021年度はまず、2020年度までに取得できたMycGが触媒する連続した2段階酸化反応のうち、2段階目の酸化反応の触媒能が低下したMycG変異体をmycinamicin生産菌で再構成することで希少な生合成中間体mycinamicin Vを効率的に生産できることを示し、国際学術雑誌で発表した。また、P450のレドックスパートナーであるferredoxin reductaseとferredoxinをMycGに融合させたMycGFNR-Fd融合酵素について、レドックスパートナー領域へのランダム変異を導入し、触媒能への影響を評価した結果、2段階目の酸化反応の触媒能が低下した変異体を取得するに至った。従来、多機能型P450の反応はP450本体を対象としたタンパク質工学による機能改変により制御が可能であることが数例報告されているが、これらの事例は各P450に特異的な制御であり、多機能型P450全般に適応することは困難であった。我々が取得した変異体はP450本体ではなくレドックスパートナー領域に変異が生じたものであり、このレドックスパートナー領域を他の多機能型P450に融合することで汎用的に多機能型P450の反応を制御できる可能性が考えられる。
2: おおむね順調に進展している
多段階酸化反応が制御されたMycG変異体を利用した希少なmycinamicin生合成中間体の生産に関しては生産系を確立できたことで検討が概ね終了した。MycG変異体の反応制御機構の解明を目的とした酵素学的評価は、大腸菌により発現させたMycG変異体の効率的な精製条件が整わず、検討中である。MycGFNR-Fd融合酵素についてはレドックスパートナー領域へのランダム変異の導入により、MycGの多段階酸化反応が制御される興味深い変異体が取得できた。この変異体をmycinamicin生産菌であるMicromonospora griseorubidaのmycG欠損株で発現させ、mycinamicin類の生産プロファイルを解析している。
MycG変異体の精製工程の更なる検討を行い、効率的な条件の確立を図る。精製タンパク質の取得が困難である場合は、既に明らかとなっている野生型MycGの立体構造に基づいたコンピューターシミュレーションを活用し、アミノ酸変異に伴う触媒活性部位と基質配座への影響などを検証することでMycG変異体の反応制御機構に関する検討を進める。多段階酸化反応が制御されたMycGFNR-Fd融合酵素は複数の変異が生じているため、反応制御に関与するアミノ酸残基を同定する。同時に他の多機能型P450との融合酵素を取得し、レドックスパートナー領域の機能改変による反応制御の汎用性の検証を加速させる。
効率的な実験を行ったため、次年度使用額が生じた。この次年度使用額は2022年度の支給額と合わせて有効活用したい。2022年度では、2021年度と同様に主として消耗品の購入に使用する。
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すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (1件) (うち国際共著 1件、 査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (2件)
Journal of Industrial Microbiology and Biotechnology
巻: 49 ページ: kuab069
10.1093/jimb/kuab069