研究課題
スフィンゴ脂質は形質膜におけるラフトの主要成分であり、真核生物以上の生物に普遍的にみられる脂質である。以前、我々はキャベツの若い葉やダイコンを磨り潰すことでファイト型セラミド1-リン酸(PC1P)が生じることを明らかにした。このスフィンゴリン脂質の生成量は総リン脂質の5%に達する。また、PC1Pは植物における最も豊富なスフィンゴ脂質のグリコシルイノシトールホスホセラミド(GIPC)の加水分解によって生じることも明らかになった。PC1Pやその前駆体のGIPCは食事性脂質であるが、その栄養学的価値はわかっていない。本研究ではPC1PとGIPCの消化性について調べることを目的とし研究を行い、以下の成果を得た。1)GIPCやPC1Pは分析方法が確立されておらず、標準品も市販されていないために、それらの単離法および分析法を確立し、これらのスフィンゴ脂質の溶解性や温度安定性など物理化学的性質を調べた。2)GIPCやPC1Pの想定される消化物であるフィトセラミド(PCer)のTLCによる分離、MALDI-TOF MSによる構造解析、ImageJを用いた定量方法を確立した。3)ウシ小腸アルカリホスファターゼによるPC1Pの消化を確認し、PCerを生成することを確認し、速度論的解析を行なった。4)PC1PがPCerに分解されることを利用して、産業的に重宝されるPCerの製造法を確立した。
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Lipids
巻: 56 ページ: 181-188
10.1002/lipd.12285