本研究は機能性食品素材であるモズク由来フコイダンのヒトT細胞白血病ウイルスI型(HTLV-1)感染抑制機構の解明と腸管吸収の検討を目的とした。HTLV-1感染の初発ステップとして、HTLV-1の表皮エンベロープタンパク質gp46が細胞表面の接着因子[ヘパラン硫酸プロテオグリカン(HSPG)]や受容体[ニューロプリン1(NPR-1)]と連続的に結合することが報告されている。フコイダンがこれらの結合を阻害すると予想して実験を始めたが、SDS-電気泳動法やゲルろ過法等の方法ではフコイダンとリコンビナントgp46の結合を検出することができず、結局、作用機序解明には至らなかった。そのため、HTLV-1キャリアやATL患者からの検体バンキングは順調に進んでいたが、臨床検体を用いた作用機序観察を実施できなかった。また、続けてフコイダンの腸管吸収過程について、ヒト腸管オルガノイドをモデルとして検討する計画であったが、オルガノイド培養に至らず終了となった。
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