研究課題
アスピリン(LDA)起因性消化管粘膜傷害の予防法の確立は消化管専門医にとって急務であるが、その発生機序をはじめ予防の検討は、ヒト小腸が約6mと長い管腔臓器で小腸粘膜採取に高度侵襲を伴うことから、動物実験に頼ってきたのが実状である。しかし、マウスやラットの腸内環境とヒトのそれとでは、腸内細菌叢をみても多くの相違点を有しており、ヒトにおける小腸(回腸)粘膜病理や小腸内細菌叢の解析はLDA起因性小腸粘膜傷害発生機序とLactobacillus gasseri(LG)による小腸粘膜傷害改善効果のメカニズム解明において重要であり且つ必須であると考え本研究に着手した。同意を得た大腸内視鏡(CS)施行患者に小腸観察(盲腸より約30cm)を行い、同部の小腸粘膜生検サンプルと生理食塩水による洗浄液から回腸細菌叢の検討を行う。また、免疫染色により小腸粘膜tight junction・COX発現・免疫担当細胞分布や炎症細胞浸潤の程度を比較する。LDA内服患者の多くはPPI(proton pump inhibitor)を服用しており、本検討は、LDA+PPI群、PPI単独群、コントロール群の3群比較とした。また、CS施行前後で便中カルプロテクチンを測定し腸管炎症の指標とし、便サンプルから腸内細菌叢の変化もLG内服前後で比較する。また、何らかの理由でCSを6W後に施行する場合は、初回検査と同様の検討を繰り返す。2019年9月に東海大学臨床研究審査委員会に申請し臨床試験賠償責任保険に加入することを条件に実施許可(19R-118)を得た。2020年2月保険に加入し本試験は実施可能となっている。しかし、現在、新型コロナウイルス感染の拡大により、本臨床研究のエントリーが滞っている現状である。
3: やや遅れている
進捗状況がやや遅れている理由として、①小腸生検を施行するために臨床試験賠償責任保険に加入する必要があった②2020年4月付けで代表研究者が東海大学付属病院から東海大学付属八王子病院へ異動したこと③新型コロナウイルス感染の拡大により、不要不急の内視鏡検査は中止せざるを得ない状況であり、臨床試験エントリーが現在滞っている。
新型コロナウイルス感染が終息さえすれば、本臨床試験エントリを積極的に行い本年度中に60名エントリーし、サンプルの解析に移る予定である。本試験の実施病院を東海大学付属病院と東海大学付属八王子病院の2施設に増やし研究の推進を図る。3年以内の試験終了とその成果報告を予定どおり行いたい。
2019年度は臨床試験委員会に本試験申請と保険加入がメインとなり、患者エントリーは新型コロナウイルスの蔓延で滞ってしまったことにより29万円の残が発生した。2020年度に本臨床研究エントリーをすべて完了し解析作業に移るにあたり、残り45人分のヨーグルト券購入、細菌叢解析費用、便中カルプロテクチン測定や免疫染色などの経費が必須であり、昨年度の残金を本年度に充てる予定である。
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