研究の目的は、アスピリン常用者と非内服者にプロバイオティクスを服用させ腸内細菌叢の変化を比較することで、アスピリン粘膜障害の病態とプロバイオティックスによる粘膜障害低減効果における腸内細菌叢の役割を明らかにすることである。大腸内視鏡を予定しているアスピリンとPPIのいずれも内服していないコントロール群、PPI/P-CABだけを内服しているPPI群、そしてPPI/P-CABとアスピリンを併用しているアスピリン群を各20名エントリーした。大腸内視鏡前に便中カルプロテクチン(FC)と糞便細菌叢解析を行うために採便を行った。大腸内視鏡検査ではスコープを回腸末端まで挿入した後、粘膜を生理食塩水で洗浄し回腸細菌叢解析用サンプルとした。すべてのエントリー患者は内視鏡検査後にプロバイオティクスを6週間摂取し、その後、再度、FCと糞便細菌叢解析をすることでプロバイオティクスの効果を検討した。その結果、プロバイオティクス摂取前後の糞便細菌叢解析にてα-diversityは、3群間で差を認めなかった。β-diversityによる腸内細菌叢の全体構造比較では、プロバイオティクス摂取前においてコントロール群とPPI群、コントロール群とアスピリン群間で有意な差を認めたが、LG摂取後にそれらの有意差は消失した。回腸粘膜浄液による細菌叢解析では、3群間でα-diversityとβ-diversityの違いは検出されなかった。また、FCは各群いずれもプロバイオティクス服用前後で有意な変化を認めなかった。以上より、プロバイオティクス摂取は、アスピリン投与によって生じた腸管内細菌叢の変化にremodellingを生じさせ腸管粘膜傷害軽減に寄与した可能性がある。今回の結果は、今後、LDA誘発小腸粘膜障害の予防と治療におけるプロバイオティクスの臨床応用に十分な可能性を提供したと考えられる。
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