研究課題/領域番号 |
19K05868
|
研究機関 | 東京農業大学 |
研究代表者 |
大石 祐一 東京農業大学, 応用生物科学部, 教授 (00313073)
|
研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
|
キーワード | リピドミクス / 紫外線 / 脂質代謝 / 皮膚 / 肝臓 |
研究実績の概要 |
我々は、「紫外線被曝が、臓器間ネットワークを介して各臓器にどのような影響を与え、メタボリックシンドロームに関わっているのか」という学術的「問い」に対して、皮膚への紫外線被曝が肝臓や脂肪組織のホルモン、サイトカインなどのタンパク質、アミノ酸代謝に影響を与えることを明らかにした。しかし、脂質代謝については解明されていない。そこで、本研究では、「紫外線の皮膚への被曝が皮膚、肝臓、脂肪組織における脂質代謝にどのような影響を与えるのかをリピドミクスを用いて明らかにし、また、その変動のメカニズムを解明」することを目的とした。昨年度は、皮膚へ紫外線照射したマウスから皮膚、肝臓、脂肪組織を採取し、脂質抽出後、リピドミクスを行い変動する脂質および脂質に関わる物質を検索した。その結果、皮膚では、セラミドの脂肪酸において超極長鎖のものが紫外線照射によって2.3倍有意に増えた。肝臓においては、ドコサヘキサエン酸を含むトリアシルグリセロールが増える傾向があった。また、リノール酸を含むトリアシルグリセロールが増える可能性があった。脂肪組織(皮下脂肪)においては、皮膚、肝臓に比して、有意に量の変動があった脂質が少なかった。 本年度は、紫外線照射したマウスから肝臓を採取し、ドコサヘキサエン酸代謝に関わる酵素の変動について検討した。α-リノレン酸からエイコサペンタエン酸に関わる酵素FADS1およびFADS2のmRNA量は紫外線照射24時間後では減少傾向だったが、48時間後では差がなくなった。また、脂肪酸合成に関わるACACAのmRNA量は紫外線照射24時間後では減少傾向、48時間後では増加した。一方、β酸化に関わるCPT1AのmRNA量は変化なかった。今回の結果からドコサヘキサエン酸の増加の原因は解明できなかった。今後、Δ4不飽和化酵素について検討し、明らかにしたい。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
コロナ禍の中、4~8月まで大学での実験を行うことができなかった。特に動物実験ができなかった。9月以降、マウスに紫外線照射させ、実験が可能となったが、今年度の目標までの研究はできなかった。
|
今後の研究の推進方策 |
紫外線照射がタンパク質代謝、アミノ酸代謝だけでなく、脂質代謝にも影響を与えることが分かった。影響を受ける臓器として、皮膚だけでなく、肝臓があった。 令和3年度は、紫外線照射により、各臓器の脂質量が変動するメカニズムを解明することを目的とする。皮膚の超極長鎖脂肪酸の生成促進に関しては、鎖長延長酵素mRNA量について検討する。 ドコサヘキサエン酸合成にはβ酸化も関わるため、皮膚・肝臓のドコサヘキサンエン酸増加のメカニズム解明にはβ酸化に関わる酵素群、またΔ4不飽和化酵素の紫外線照射による影響について検討する。実験手法としては、紫外線照射したマウスから各臓器を採取し、リアルタイムPCR、ウエスタンブロッテイング法などを用いて測定する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍により、8月以前に実験ができず、9月以降の使用となったため。令和3年度は、令和2年度に実施できなかった、ドコサヘキサンエン酸の増加のメカニズム解明のため、Δ4不飽和化酵素のmRNA量測定、β酸化に関わる酵素のmRNA量を測定するために使用する予定である。
|