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2019 年度 実施状況報告書

食品中乳化剤による腸炎誘発機序の解明 -炎症性腸疾患の治療へ向けて-

研究課題

研究課題/領域番号 19K05875
研究機関防衛医科大学校(医学教育部医学科進学課程及び専門課程、動物実験施設、共同利用研究施設、病院並びに防衛

研究代表者

栗原 千枝  防衛医科大学校(医学教育部医学科進学課程及び専門課程、動物実験施設、共同利用研究施設、病院並びに防衛, 内科学, 助教 (90532515)

研究分担者 穂苅 量太  防衛医科大学校(医学教育部医学科進学課程及び専門課程、動物実験施設、共同利用研究施設、病院並びに防衛, 内科学, 教授 (90255464)
研究期間 (年度) 2019-04-01 – 2022-03-31
キーワード乳化剤 / 腸内細菌 / 炎症性腸疾患
研究実績の概要

炎症性腸疾患 (IBD) は原因不明の難治性疾患であるが、病因の一つとして食べ物や腸内細菌などの環境的要因による消化管免疫バランスの破綻が想定されている。加工食品用添加物の一つである乳化剤が、動物モデルにおいて腸内細菌叢を変化させ腸炎を引き起こすことが報告され、近年のIBD患者数増加の一因となっている可能性が示された。本研究では、乳化剤がどのような機序で腸内環境バランスを破壊し腸炎を誘発するのかを解明し、IBDの予防や治療に結びつけることを目指す。初年度の2019年度は、以下の点を中心に解析をおこなった。
(1) 乳化剤による腸内細菌叢の変化:乳化剤polysorbate 80 (以下P80)投与マウスの大腸および小腸の腸内細菌叢の変化について、腸管内容物を用いてT-RFLP法で解析した。P80により増加した菌の同定は16S rDNA配列解析によりおこなった。腸内細菌叢の変化は大腸よりも小腸で大きく、小腸で硫化水素産生菌のP. mirabilisの増加が見られた。また、P80を含んだ半固形培地でP. mirabilisの運動性の亢進が確認されたことから、乳化剤存在下でP. mirabilisがより増殖しやすい環境に移動できることが増加の一因であると考えられた。
(2) 乳化剤が消化管免疫および腸炎におよぼす影響:P80単独投与マウスにおいて、小腸繊毛萎縮の傾向が見られたが、炎症性サイトカイン産生の増加や腸管透過性の亢進は認められなかった。一方、小腸炎モデルマウスにP80を投与すると、組織学的スコアの増悪、炎症性サイトカイン産生の増加が確認されたことから、乳化剤は小腸炎に対する脆弱性を増悪させることが示唆された。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

当初の計画どおり、乳化剤P80による腸内細菌叢の変化を調べ、増加する菌を同定した。また、同定されたP. mirabilisの運動性が、P80存在下で亢進することを明らかにした。腸内細菌叢の変化が大腸よりも小腸で大きかったことから、小腸の腸内細菌叢がP80の影響を強く受けていると考え、本年度は小腸に焦点を当て解析を進めた。乳化剤が腸管に与える影響については、健常なマウスではP80は小腸炎を惹起しないが、小腸炎マウスでは炎症を増悪することが確認された。

今後の研究の推進方策

本年度の研究結果から、乳化剤P80投与による小腸炎増悪の原因の一つとして、P80による腸内細菌叢変化が関与している可能性が示唆された。来年度は、P80で変化した腸内細菌叢による腸炎への影響について更に解析を進める。具体的には、P80を投与したマウスの糞便微生物移植 (FMT)や、P80により増加したP. mirabilisの直接投与を計画している。また、乳化剤による腸内細菌叢の変化に脂肪食が与える影響について解析を進める予定である。

次年度使用額が生じた理由

年度末にかけて、新型コロナウイルスの影響により予定していた物品の購入が遅れたことにより、次年度使用額が生じた。当該支出分については次年度に計上予定である。

  • 研究成果

    (4件)

すべて 2019

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (3件) (うち国際学会 2件)

  • [雑誌論文] Dietary emulsifier polysorbate‐80‐induced small‐intestinal vulnerability to indomethacin‐induced lesions via dysbiosis2019

    • 著者名/発表者名
      Furuhashi Hirotaka、Higashiyama Masaaki、Okada Yoshikiyo、Kurihara Chie、Wada Akinori、Horiuchi Kazuki、Hanawa Yoshinori、Mizoguchi Akinori、Nishii Shin、Inaba Kenichi、Sugihara Nao、Watanabe Chikako、Komoto Shunsuke、Tomita Kengo、Miura Soichiro、Hokari Ryota
    • 雑誌名

      Journal of Gastroenterology and Hepatology

      巻: 35 ページ: 110~117

    • DOI

      doi:10.1111/jgh.14808

    • 査読あり
  • [学会発表] 乳化剤が腸管自然リンパ球に及ぼす影響の検討2019

    • 著者名/発表者名
      堀内和樹、東山正明、西井慎、溝口明範、因幡健一、杉原奈央、塙芳典、和田晃典、古橋廣崇、澁谷尚希、栗原千枝、岡田義清、渡辺知佳子、高本俊介、冨田謙吾、穂苅量太
    • 学会等名
      第43回日本リンパ学会総会
  • [学会発表] DISTINCTIVE SUBPOPULATION OF INNATE LYMPHOID CELLS EFFLUXED FROM INTESTINAL MUCOSA BY DIFFERENT INTESTINAL INFLAMMATIONS2019

    • 著者名/発表者名
      Kazuki Horiuchi, Masaaki Higashiyama, Koji Matsumura, Hiroshi Ohno, Shin Nishii, Akinori Mizoguchi, Kenichi Inaba, Nao Sugihara, Yoshinori Hanawa, Akinori Wada, Hirotaka Furuhashi, Naoki Shibuya, Chie Kurihara, Yoshikiyo Okada, Hideaki Hozumi, Chikako Watanabe, Shunsuke Komoto, Kengo Tomita, Ryota Hokari
    • 学会等名
      Digestive Disease Week 2019
    • 国際学会
  • [学会発表] Higher TNFα and MIP-1β expression in pretreatment colonic mucosa have potential to predict of achieving mucosal healing by GMA therapy in ulcerative colitis patients2019

    • 著者名/発表者名
      Chie Kurihara, Toshihide Ohmori, Hirotaka Furuhashi, IKenichi naba ,Nao Sugihara, Yoshinori Hanawa, Kazuki Horiuchi, Akinori Wada, Shin Nishii, Akinori Mizoguchi, Yoshikiyo Okada, Naoki Shibuya, Hideaki Hozumi, Masaaki Higashiyama, Chikako Watanabe, Shunsuke Komoto, Kengo Tomita ,Ryota Hokari
    • 学会等名
      Digestive Disease Week 2019
    • 国際学会

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公開日: 2021-01-27  

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