研究課題/領域番号 |
19K05876
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研究機関 | 弘前大学 |
研究代表者 |
佐藤 之紀 弘前大学, 農学生命科学部, 教授 (50226015)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 糖 / 水和 |
研究実績の概要 |
前倒し支払い請求により,温度制御可能な微量粘度計を導入し,基本の糖としてスクロースの粘度による水和パラメータhの迅速測定を試みた。水和パラメータhは粘度測定によるB係数の項と密度測定による分子体積V2を求める項に分かれるが,B係数測定の項が水和パラメータh算出の律速段階である。新規の微量粘度計を用いてスクロースの25℃のB係数を求めたところ,キャピラリー粘度計を用いる従来法とほぼ同じB係数が得られた。これにより,約7倍程度の時間短縮と試料半量に制限できることになった。しかし,B係数を求める際に濃度の2次関数にフィッテングさせる際にプロットのバラツキが従来法に比べて大きかった。また,予算上,測定温度範囲が15-40℃であり,従来法のように5℃からの測定ができないなどの欠点が明らかとなった。さらに,水和パラメータhが知られていないフラクトースの迅速な水和パラメータhの算出を試みたところ,スクロースの場合と同様に時間短縮と試料量の減量は可能であったものの,B係数算出の際のプロットのバラツキが問題と思われた。したがって,水和パラメータhの迅速測定には,従来法にみられる高い精度を維持しつつも,迅速に処理できるシステムを考える必要ありとの結論に至った。今年度は,25℃での数種の糖アルコールのパラメータhや新規な6炭糖のパラメータhを従来法から算出し,それらの水和パラメータhと水分活性から求められるパラメータαの関係を見出すことができた。その結果,糖の水和パラメータhとパラメータαの関係上にきわめて一致ていることを見出した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
迅速な粘度測定からB係数の項目を短時間に行い,同時に密度測定による分子体積V2も算出しようと試みたが,粘度測定と密度測定とも精度の点で物理化学的な分子の議論に用いるには難しいと思われた。したがって,多くの分子の中から,水和が高い物質のスクリーニングに用いる方法としての有効性を追求できると考えられた。
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今後の研究の推進方策 |
従来のキャピラリー粘度計を用いた方法に改良を加え,一度に多サンプルを測定できる方法を考える。また,目下のところ,早期に水和パラメータhを算出しなければならない事項に関して,25℃の結果で比較し,水和パラメータhと水分活性から求められるパラメータαの関係をまずは明らかにしたい。一方,水和パラメータhの算出に必ず必要な分子の体積V2を求める工程で精密密度計を駆使しているが,12年間毎日使用している限界が来て,要修理の状態になった。修理のための予算捻出が想定外であり,今後,研究計画の遅延が予想される。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初に業者が提示した測定器の機種と見積金額にミスがあり,一つ下のスペックの機種に変更せざるを得なかった。そこで,研究計画の大幅な変更(測定温度を低温で測定できなくなった)が生じた。さらに,水分活性測定のためのチャートレコーダーが故障し,水和パラメータhの算出に必須な水溶液の密度測定器のトラブルが同時に起こり,経費の想定外の出費が続く見込みで,極めて切迫した研究費使用計画の状態にある。今後の経費充当を考える必要が出てきた。
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