マスカット・ベーリーA(MBA)は日本ワインの主力ブドウ品種であるが,微生物安定性の低さが指摘されている。しかしながら,ブドウ品種により微生物汚染のうけやすさが異なるという報告やその要因についての報告はない。本研究では微生物汚染の1つである産膜汚染に着目し,産膜形成のしやすさがワインで異なることを明らかにした。令和3年度は,産膜形成しにくかったワインを用いて2つの下記の項目を行った。 ① 赤ワイン由来ポリフェノール化合物の産膜形成への影響:これまでの研究でポリフェノール化合物およびタンニン濃度が高いワインではこれら化合物濃度が低いワインよりも産膜形成が抑えられたことがわかった。そこで,産膜形成しないワインについて,ポリフェノール吸着性をもつ担体を用いてポリフェノールを除去し,産膜形成しやすくなるかを検証した。またカラムクロマトグラフィーを用いて粗ポリフェノール抽出物を抽出し,産膜形成用培地もしくはワインに本抽出物を添加した場合の産膜形成の有無について検証した。 ② 産膜形成抑制成分の分離同定:産膜形成しないワインからカラムクロマトグラフィーにより粗ポリフェノール抽出物を抽出し,再度溶媒組成を変えて分画操作を行った。得られた各フラクションについて産膜形成試験を行い,産膜形成抑制成分が含まれるフラクションを特定する。活性が認められたフラクションは再度回収して再度分取精製を行うとともに,抑制成分の推定を試みる。
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