喘息やCOPDなどの呼吸器疾患のある患者では、細気道においてムチンを主成分とする粘液の過剰分泌が見られる。この過剰分泌は気道を閉塞することで換気障害につながり、症状を悪化させる。そのため、気道細胞におけるムチンの過剰な分泌を抑制するためにムチン分泌機構の解明が有用である。 我々は気道の粘膜の主成分であり、外界の異物から体を守る働きのある粘液ムチンの発現制御について研究を行った。その結果ムチンの分泌がサイトカインや細胞外基質(ECM)による制御を受けていることを見出した。ECMにはコラーゲンやラミニン、フィブロネクチンなど様々な種類が存在するが、それぞれムチン産生への影響が大きく異なる。ECMからのシグナルがムチンの産生の制御に関わるという報告はこれまでに無い。また秋田県産長ネギなどの食品に含有される成分がムチン産生を抑制する結果を得た。この成分と外分泌の関連について解析を行った。 ECMや食品含有低分子は細胞間接着分子インテグリンやリン酸化酵素Aktを介した経路でムチン(MUC5B、MUC5AC)産生に与える影響について喘息モデルマウスなどを用い解明した。生体を構成する主要なECMの内、4型コラーゲンは喘息の原因の一つである気道ムチンの産生を抑制した。それに対し、同じく主要なECMであるラミニンは逆に気道ムチンの作成を増加させた。これらの活性は、インテグリンを介して気道表面の細胞内に伝達され、気道ムチンの産生を制御することを明らかにした。 さらに本年度には、特に食品などにも含まれる低分子成分がムチン産生、分泌の制御やECM産生に与える影響について解析し、その作用経路を含め有用な結果を得た。
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