研究課題/領域番号 |
19K05887
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研究機関 | 龍谷大学 |
研究代表者 |
山崎 英恵 龍谷大学, 農学部, 教授 (70447895)
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研究分担者 |
森 紀之 同志社女子大学, 生活科学部, 准教授 (90585184)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 日本食 / おいしさ / 自律神経活動 / 精神性発汗 / 気分状態 |
研究実績の概要 |
日本食は国内外において広く支持されており、特に健康の維持増進に対する効果に関してはさまざまな研究が展開されエビデンスも共有されている。健康に対して好ましい効果をもたらす理由として、栄養学的特性の寄与が大きいことは当然であるが、日本食が情動に与える精神的作用も少なからず寄与していると予想される。精神状態、情動に影響する食には、海外の高エネルギー高脂質ないわゆるコンフォートフードなどが知られている。一方、日本食は低エネルギー低脂質であるにも関わらず、高い満足感やコンフォートさを有している。本研究では、日本食のヒトの情動に力強く訴えかける性質(=食感動性)を明らかにすることを目的とし、喫食により引き起こされる情動変化をアンケートによる主観的評価と自律神経活動、唾液腺血流量、精神性発汗の客観的指標により評価し、各々の評価指標の関連性について検討してきた。食がもたらす精神的作用については、日本食全体を総合的な視点で捉える必要があるが、ここでは主食となるご飯、椀ものに使われる出汁など、単一の食品を試料として検証した。その結果、主観的に感じる出汁のおいしさの感覚やもっと食べたいという行動につながる情動に対して、食品の匂いが大きく寄与することが確認された。一方、唾液腺活動は匂いの有無による有意な変化は認められず、「おいしい」という感覚よりも「食べたい」という意欲や行動に関連している可能性が示された。また、喫食時の緊張感や興奮を捉えるための手段として、精神性発汗を測定した。同時に、喫食前後での精神状態の変化について主観的評価を行った。その結果、精神性発汗の指標と試験試料に対する嗜好性との関連はあまりみられなかったものの、精神性発汗の指標と気分状態の変化の指標に関して弱い相関関係が示され、精神性発汗を用いた指標は喫食時の情動変化を反映する可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
2021年度前期に予定していた実験は、コロナ感染者の増加に伴い大学の危機管理レベルが引き上げられ、実質的にヒト実験の実施がほぼ不可能な状態であったが、後期に入り、徐々に実験を再開し、前年(2020)度の再現性確認として、嗜好性が高い日本食として、鰹と昆布の合わせだしを喫食した際の唾液腺活動の変化、Visual Analog Scaleによる主観的評価を評価の主軸として、香りや視覚の寄与について再検証した。感染予防対策をしながら少しずつ実験を再開しているものの、予定よりも大幅に進行が遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
現況では、大学の危機管理レベルも緩和され、人を対象とした実験実施は徐々に可能になってきており、2022年度は最終年度として、実験の再現性を検討するなど、遅れを取り戻すべく確実にデータを蓄積していきたいと考える。また最終年度として、これまでの結果を総括し、積極的に研究成果を発信する機会を得たいと考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍において、ヒトを対象とした実験は被験者リクルートが困難であり、当初の予定通り進められなかったことが次年度使用額が生じた主たる理由である。また予定していた学会への参加がオンラインに切り替わるなど、実験消耗品費用以外の予算執行についても大幅な変更を余儀なくされた。2022年度は実験の再現性確認と実験成果のまとめ、研究成果の発信に努めると共に、遅延している実験の消耗品ならびに謝金などに充当することとする。
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